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vol. 366 ベトナムの8つの地方区分 ~多様性を知るヒント~

日本では北海道、東北、関東、中部、近畿などのように全国を大きく地理的、行政的な区分に分けられます。

ベトナムも同じように全土を8つの地方に分けることができます。

ベトナムを8つの地域に分けて眺めることで、それぞれの地域の歴史、気候、特徴等を広く把握することができます。

さっそく見てみましょう。

まず大きく3つ

ベトナムは北部(miền bắc), 中部(miền trung), 南部(miền nam)に大きく分けられます。

タインホア省より北が北部で、ビントゥアン省より南は南部になり、その間の地域が中部になります。

その北部、中部、南部がさらにそれぞれ細かな地方区分に分かれていきます。

北部

ベトナム北部は東北部(đông bắc bộ)、西北部(tây bắc bộ) 、紅河デルタ地方(đồng bằng sông hồng)に分けることができます。

東北部(đông bắc bộ)

đông bắc bộは「東北部」という意味です。漢越語もそのまま【東北部】と書きます。Vùng Đông Bắc(東北地方)とも言います。

北部の北東の地域を指し、中国の広西チワン族自治区と国境を接し、中国との関係が深い地域です。ヌン族(dân tộc Nùng)などの中国系の少数民族もこの地域に多く住んでいます。

主に1000m級の低山岳地帯で構成され、高原が多く、夏は涼しいですが、冬は中国大陸からの風が吹いて寒さが厳しくなります。場所によっては氷点下を切る所もあります。

ちなみに夏にこの地域のphượt(バイク旅)は走りやすく、絶景も盛り沢山で非常にオススメです。

中国とベトナムの国境にあるカオバン省のバンゾック滝。川の向こうは中国です。この滝もキレイでしたが道中の景色のほうがもっと美しかった印象があります。

西北部(tây bắc bộ)

tây bắc bộ「西北部」も漢越語でそのまま【西北部】と書きます。

北部の北西の地域を占め、北は中国の雲南省、西はラオスと国境を接しています。

既婚女性が髪をお団子にするのが特徴のタイ族(dân tộc Thái)などのラオス・タイ系の少数民族も多く住んでいます。

主に1000m〜2000m級の山岳地帯が連なり、冬は寒く、夏にはラオス風(gió Lào)というフェーン現象で40℃以上になることもあります。

トマトはちょうどラオス風が吹いてる時にソンラ省の山岳地帯をphượt(バイク旅)したことがあります。まるでエアコンの室外機の風を常に受けているような感じで、熱中症で死にそうになりました(笑)。

ソンラ省の山奥にある東南アジア最大級のダム「ソンラ発電所」。暑くて死にものぐるいで行った割には意外と小さくてがっかりしました。

紅河デルタ地方(đồng bằng sông hồng)

đồng bằngは「三角州、平野」、sông hồngは「ホン川、紅河(こうが)」です。

ホン川は中国の雲南省からトンキン湾に流れる全長1200kmの大河です。

北部では数少ない平野部で、流域は豊かな穀倉地帯を形成し、人口も多く、さきほどの2つの地域よりも経済的に発展している地方です。

川の中心部にある首都のハノイ(川の内側を流れているためハノイは漢越語で【河内】と言います)や、下流にある港湾都市のハイフォン市も紅河デルタ地方に含まれます。

また、陶磁器、漆器、刺繍製品、織物、竹細工などのベトナムの伝統的な手工芸品の多くがこの地域で生産されています。日本からの観光ツアーになぜかよく組み込まれているバッチャン村のバッチャン焼きが有名ですね。

紅河デルタ地方にはphàという車やバイクを川岸から川岸まで運ぶフェリーも通っています。写真はphượt中に近道をgoogle先生に従ってたらphàの運路だらけで結局時間がかかって遠回りになってしまった時の一枚。

中部

中部は北中部(bắc trung bộ)、沿海南中部(duyên hải nam trung bộ)、中部高原(tây nguyên)の3つに分かれます。

北中部(bắc trung bộ)

bắc trung bộ「北中部」も漢越語でそのまま【北中部】と書きます。北部を頭だとすれば北中部は細くなった胸元にあたります。

ゲアン省のホーチミンの生家、フエの王宮、クアンビン省のフォンニャ・ケバン洞窟など、世界遺産もあり観光的には見所もたくさんあります。

しかし毎年南シナ海からくる台風がたびたび北中部に上陸し、洪水被害も多く、貧しい地域が多いのも特徴です。

また、この地域のベトナム語は非常になまりが強く、ベトナム人でさえも何を言っているのかわからないほど独特な発音と語彙を保持しています。

トマトはベトナムの地方で北中部だけまだphượtしたことないので、近々また旅に出てリポートしたいと思います。

中部高原(tây nguyên)

tây nguyênは「中部高原(地方)」という意味ですが漢越では【西原】と書きます。

中部高原はカンボジア、ラオスと国境を接する中部の山岳地帯を指します。ちょうどベトナムの背中のあたりになりますね。

観光地としては避暑地のダラットやベトナムコーヒーの生産地のバンメトートなどが有名ですね。

中部高原地方は古くからキン族(ベトナムの人口の多数を占める主要民族)以外の少数先住民族が多く住んでいた地域でした。

しかし1950年代の北部からの移民政策以降、キン族の割合が急激に増え、自然破壊や少数民族の文化を壊していった歴史があります。

現在もその問題は続いており、経済発展と少数民族の保護の両立が中部高原の課題となっています。

ちなみに中部高原地方をphượtした感想をいうと、山道が多くて道路状況が悪く、北部の山ほど起伏がないので、似たような景色が続き、走っててあまり面白みは感じられませんでした(笑)。

沿海南中部(duyên hải nam trung bộ)

duyên hảiは「海沿いの」という意味で、漢越では【沿海】と書きます。

北中部や中部高原と比べて気候が温暖で安定しており、漁業も盛んで経済的に発展している地域が多いです。

ダナン、ニャチャン、ファンティエットなど海がキレイなリゾート地もたくさんあり観光業でも潤っています。

phượt的にもこの地域を海沿いに眺めながら走るのは最高で、非常におすすめです。

ニントゥアン省にあるvĩnh hy湾。ニントゥアン省の海沿いはこのような絶景スポットが多かったです。

南部

南部は東南部(đông nam bộ)とメコンデルタ地方(đồng bằng sông cửu long)に分かれます。

東南部(đông nam bộ)

đông nam bộ「東南部」も漢越語でそのまま【東南部】と書きます。

この地方はベトナム最大の経済都市であるホーチミン市を筆頭に経済発展が非常に進んでいる地域です。

気候も常夏で雨季と乾季しかなく住みやすいので北部、中部からの移住者も多いです。

それに伴い、都市化や人口増加率も最も高く、環境汚染や交通の過密化など社会問題も多く残っています。

ちなみに現在のホーチミン市はかつてサイゴン(Sài Gòn)やザーディン(Gia Định【嘉定】)などとも呼ばれており、名称がコロコロ変わっていますが、もともとはカンボジアのクメール人が居住していた地域で、彼らはホーチミン市のことを「プレイノコール」と呼んでいます。

カンボジア・ベトナム国境のバベットにて。prey nor kor(ホーチミン市)まで73kmという意味です。

メコンデルタ地方(đồng bằng sông cửu long)

đồng bằngは「三角州、平野」、sông cửu longは「クーロン(九龍)川」という意味です。メコン川のベトナム語名は九龍川と呼びます。メコン川は支流がたくさんあり、その支流をたくさんの龍にみたてていることからきています。

この地方は水路を中心とした大平野が広がり、農業が非常に盛んです。
米は3期作で年中収穫でき、ライスペーパーなどの米製品や熱帯気候特有の果物、魚介類も豊富で食べ物にはまず困りません。

観光もミトー市やカントー市などでの水上市場やメコン川クルーズが有名で見所もたくさんあります。カンボジアからも近く、クメール民族も多く住んでおり、北部、中部とは大きく異なる文化を保持しています。

ちなみにこの地域で話されるベトナム語も南部弁の訛りが強くなった感じで非常に聞き取りづらいです…。

phàでメコン川を渡る。
クメール系の寺院。

まとめ ベトナムの魅力は地方にあり

参照:https://vi.wikipedia.org/wiki/C%C3%A1c_v%C3%B9ng_du_l%E1%BB%8Bch_%E1%BB%9F_Vi%E1%BB%87t_Nam

ベトナム全土を8つに分けただけでもそれぞれの地方で気候、民族、文化が大きく異なることがわかります。

つまり、「ベトナムは多様性に満ちている」ということです。

ホーチミンやハノイに住んでいたり、有名な観光地を訪れたことがあるだけでベトナム全体を語ってはいけません。ベトナムの本質は地方にこそあります。

日本人が普段接しているベトナム人は多数を占めるキン族(dân tộc kinh)のベトナム人がほとんどです。54ある民族のうちのたった1つにしか過ぎません。

ベトナムの地方に行けば行くほどキン族の割合は減り、多数の少数民族に出会うことができます。彼らは都市部に行くことはめったにないため、彼らと接触するためには我々が地方に行くしかありません。

ベトナムの多様性、本質を感じたければまず「地方」に行くべきです。