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vol.241 [慣用句] 鉄を磨けば針になる

ptdh / Pixabay

久しぶりの慣用句から学ぶベトナム語シリーズです。

今回は「có công mài sắt có ngày nên kim」という慣用句を紹介します。

単語の意味を確認しながら一体どんな慣用句なのか一緒に考えながらみてみましょう。

語彙解説

có công=労働を行う、仕事に耐える

まずcôngは「労働」という意味です。漢越では【工】です。côngはつらい肉体労働や単純労働などを表します。

そのcôngに〈存在〉を表すcó(=ある、いる)がついているので「có công=労働がある→労働を行う、耐える」となります。

mài sắt=鉄を磨く

màiは「磨く、研ぐ」、sắtは「鉄」という意味です。

どちらも日常会話ではあまり使わないので覚える優先順位は低いです。余裕があればsắt=鉄くらいは覚えておいてもいいかも。

có ngày〜=〜の日が来る

この場合のcóは「起こる、やって来る」という意味で使っています。

cóってそんな意味もあるの!?って思うかもしれませんが、心配無用。わざわざcóの新しい意味を覚える必要はありません。

cóは〈存在=ある、いる〉というコアさえ覚えていればあとは文脈で上の訳出は可能だからです。

・sau này có ngày động đất lớn.
いつか大地震の日がやって来るだろう。

nên kim=針になる

kimは物を縫ったりする時に使う小さい針のことです。漢越は【金】です。

そしてnênは「〜になる」という動詞で使っています。

他にもnênは「〜ので、だから」という意味の接続詞の用法や、nên+Vで「Vしたほうがいい」という意味の助動詞としても使える多義語です。

nênはくる位置によって品詞や意味が変わるので注意しましょう。

慣用句の意味

以上のことから「có công mài sắt có ngày nên kim」で「鉄を磨く労働に耐えればいつか針になる日がくる」となります。

もっとシンプルに「鉄を磨けば針になる」と訳してもいいでしょう。

つまりこの慣用句の意味は「根気よく物事を続けていれば最後にはきっと成功する」という意味の慣用句です。

日本語でいうところの「石の上にも三年」とほぼ同じ意味ですね。

日本人もベトナム人もこのことわざのような根気強い努力が好きですが、こういった慣用句は時として間違った努力や効率の悪い努力までも礼讃してしまう場合があります。

鉄でもクズ鉄を磨いていては全く意味がないし、磨き方も手ではなく機械で磨く方法などを常に模索していかなければなりません。

あくまでも“正しい”努力を継続することが成功への道だということを常に意識しなければなりませんね。

まとめ

・có công mài sắt có ngày nên kim=鉄を磨けば針になる。
・cóのコアは〈存在〉。
・nênは動詞「〜になる」、接続詞「〜ので」、助動詞「〜したほうがよい」の3つの意味を覚えよ。

2件のコメント

いつも楽しく読ませていただいてます。
質問です。

thànhではなくnênを使う理由は何でしょうか。

trở nên+形容詞
trở thành+名詞

だったと思います。
上記の法則にしたがえば、kimは針という名詞ですから、thànhが来るのが正当ではないでしょうか。

友人が卒論で書いていたのですが、trở thànhとtrở nênを厳密に区別して使うようになったのは20世紀以降のことだそうです。
今回のテーマはことわざなので、この2つの使い分けが確立していなかった昔の表現が現在まで受け継がれているのではないでしょうか。

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