vol.48 漢越語6パターン




ひとくちに漢越といってもベトナム語の漢越には様々な種類があります。漢越を6パターンに分類したのでそれぞれ細かく見ていきましょう。

vol.46 漢越を知ることはベトナム語を知ること

2016年11月30日

①日本語そっくりパターン

日本語に意味も発音も似ているパターンです。

ベトナム語漢越意味
kết hôn(ケッホン)【結婚】結婚(する)
thái độ(タイド)【態度】態度
trị liệu(チリェウ)【治療】治療(する)
cảm động(カームドン)【感動】感動(する)
đồng ý(ドンイー)【同意】同意(する)

※()内のカタカナはあくまで発音が似ていることをわかりやすく示したものです。安易にカタカナでベトナム語を覚えないでください。

日本語とベトナム語の意外な共通点

これらのパターンは意味ももちろん似ていますが、発音もそっくりですね。

実はベトナム語の漢越語の音は現代中国語よりも日本語の音読みのほうが似ています。ベトナム語の漢越音も日本語の漢音も同じ時代の同じ場所の人から得た発音だからです。

ベトナムの漢越音は10世紀以前の唐の都、長安の中国人から学んだ発音を基礎にしています。そして日本語の音読みの1つである「漢音」も唐の時代に遣唐使が長安や洛陽の人の発音を日本に持ち込んだものです。

つまり日本とベトナムの漢字音は古い中国語の発音を現代まで残しているという共通点があるのです。

②和製漢語パターン

日本で作られた漢語が中国を経由してさらにベトナムに入ってきたパターンです。

ベトナム語漢越意味
ý thức(イートゥック)【意識】観念、意識
ngân hàng(ガンハン)【銀行】銀行
thần kinh(タンキン)【神経】神経
đại biểu(ダイビェーウ)【代表】代表
năng động(ナンドン)【能動】能動的な

「日本➔中国➔ベトナム」というルートで漢語が伝来

ベトナム語に漢越語が大量に取り入れられたのは北属期(紀元前111年〜938年)だけでなく19世紀末から20世紀のはじめにも和製漢語(日本で作られた漢語)が中国を経由してベトナムに入ってきました。

和製漢語は明治時代初期に欧米の文化、学問、概念などを日本語に土着化させるため、当時の学者が学術用語などを翻訳する形で生まれました。「経済」「社会」「政治」などの和製漢語は明治時代に生まれた日本語であり、それ以前には存在しなかった言葉です。

それらの和製漢語を中国が逆輸入する形で取り入れ、さらに中国から漢越語という形でベトナムまで伝わりました。

ベトナムは日本製?

ベトナムの正式名称は「ベトナム社会主義共和国」です。ベトナム語では「cộng hòa xã hội chủ nghĩa Việt Nam 」といいます。

「cộng hòa【共和】」も「xã hội【社会】」も「chủ nghĩa【主義】」も全部和製漢語からきています。和製漢語なくしてベトナムの国名は作られなかったのです。

他にも「cộng sản【共産】」、「giải phóng【解放】」、「nhân dân【人民】」、「cách mạng【革命】」、「dân tộc【民族】」などベトナムの政治体制に必要な概念もその多くは和製漢語です。

場合は「ジョウゴウ」と読む!?

和製漢語パターンの漢越の一部におもしろい発音の現象がみられます。

日本語では訓読みされている漢語がベトナムの漢越語では音読みの発音に従っているという現象です。
例えば「場合」は日本語では「バアイ」と訓読みします。しかしベトナム語では「trường hợp(チョンホップ)」と「場合」を音読みしたときの「ジョウゴウ」に近い発音になります。
「手続」も「thủ tục(トゥートゥック)」と訓読みの「テツヅキ」ではなく音読みの「シュゾク」に近い発音になります。この現象は中国語でも同様にみられます。

このような現象が起こるのは中国語やベトナム語に日本語の訓読みがないからです。訓読みは日本人が漢字に日本語の訳を当てた読み方なので、他の国にないのは当然ですね。

③ベトナム製パターン

日本人が作った和製漢語もあるならベトナム人の手で作られたベトナム製漢語ももちろんあります。

ベトナム語漢越意味
lịch sự【歴事】礼儀正しい
du lịch【遊歴】旅行する
quan trọng【関重】重要な、大切な
ích kỷ【益己】わがままな、自己中な
suy nghĩ【推擬】考える

漢字の知識を最大限に生かせ!

これらのパターンはベトナム語だけみるとピンときませんが漢字に直してみるとわかりやすくなります。

例えばlịch sự【歴事】=「礼儀正しい」となるのは、[歴]という漢字に「順序立てる、整える」という意味があり、【歴事】=”物事が整っている”ということからきているからです。

また【遊歴】=「旅行する」となるのも、漢字の[遊]は「遊ぶ」の他に「ぶらぶらする、歩き回る、遠出をする」という意味もあり、”歴史を歩き回る”から【遊歴】で「旅行する」となるからです。

このように漢越語がわかれば連想ゲームのようにその単語をイメージできて覚えやすくなります。

我々日本人は「海」という漢字の字面を見て、青く広い海洋を思い浮かべることができるように、漢字の形を見るだけでパッとその字のイメージや意味をすぐに想像することができます。もともと持っている漢字の知識を最大限に生かしてベトナム語の単語を攻略しましょう。

④逆さ読みパターン

中国語の漢字の語順やベトナム語文法の語順に従い、日本語とは漢字の語順が逆になっている漢越語もあります。

ベトナム語漢越意味
giới thiệu【介紹】紹介する
hòa bình【和平】平和(な)
ngoại lệ【外例】例外
trưởng thành【長成】成長する
sở trường【所長】長所

逆になっているので漢字を間違えやすいですが、このパターンの漢越語はそんなに多くありません。逆さ読みの漢越語に出会ったらその都度その単語を覚えていけば十分に対処できます。

⑤中国語そっくりパターン

ベトナム語を漢越に直した時に、中国語と同じ漢字を使っているパターンもあります。

ベトナム語漢越意味
công ty【公司】会社
hành lý【行李】荷物、旅行かばん
mỹ【美】アメリカ
hộ chiếu【護照】パスポート
kết thúc【結束】終了する

トマトが台湾へ旅行しに行ったとき、中国語をみてベトナム語の漢越語と同じものが結構あることに驚きました。

中国語の漢字のパターンとベトナム語の漢越語のパターンは非常に似通っています。中国語を知っている人はベトナム語の勉強に相当有利です。

⑥純越語+漢越語パターン

ベトナム語の2文字の熟語は[純粋ベトナム語+純粋ベトナム語]か[漢越語+漢越語]の場合がほとんどです。

しかし[純粋ベトナム語+漢越語]もしくは[漢越語+純粋ベトナム語]のミックスされたパターンも存在します。

ベトナム語意味純粋ベトナム語漢越
chung cưマンションchung=一緒に…するcư=【居】
chủ nhà家主nhà=家chủ=【主】
động đất地震đất=大地、土地động=【動】
mắt kính眼鏡mắt=目kính=【鏡】
lạc rang落花生rang=あぶる、炒めるlạc=【落】

このように単語を分解してみるとなぜそのような熟語ができたのかわかり、覚えやすくなります。2文字や3文字の熟語に出会ったら、面倒くさがらずに1文字ずつ辞書で調べることをおすすめします。それによって単語の定着率がぐっと上がるでしょう。

まとめ

現代ベトナム語と漢越語は切っても切れない密接な関係にあります。同じ漢字文化圏として日本語の漢語とも多くの共通点を持ちます。だからこそその共通点を生かし、もともと持ってる日本語の漢字の知識をベトナム語の勉強に存分に生かしましょう。

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