vol.48 漢越6面相

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ひとくちに漢越といってもベトナム語の漢越には様々な種類がある。筆者が独自に漢越を6パターンに分類したのでそれぞれ細かく見ていこう。

漢越って何だっけ?って人はコチラ→vol.46 漢越を知ることはベトナム語を知ること

①日本語そっくりパターン

日本語に意味も発音も似ているパターン。

ベトナム語漢越意味
kết hôn(ケッホン)【結婚】結婚(する)
thái độ(タイド)【態度】態度
trị liệu(チリェウ)【治療】治療(する)
cảm động(カームドン)【感動】感動(する)
đồng ý(ドンイー)【同意】同意(する)

※()内のカタカナはあくまで発音が似ていることをわかりやすく示したものである。安易にカタカナでベトナム語を覚えないこと。

日本語とベトナム語の意外な共通点

これらのパターンは意味ももちろん似ているが、発音もそっくりである。実はベトナムの漢越音は現代中国語よりも日本語の音読みのほうが似ている。ベトナム語の漢越音も日本語の漢音も同じ時代の同じ場所の人から得た発音だからだ。

ベトナムの漢越音は10世紀以前の唐の都、長安の中国人から学んだ発音を基礎にしている。そして日本語の音読みの1つである「漢音」も唐の時代に遣唐使が長安や洛陽の人の発音を日本に持ち込んだものである。

つまり日本とベトナムの漢字音は古い中国語の発音を現代まで残しているからお互いの音が似通っているのだ。

②和製漢語中国経由パターン

日本で作られた漢語が中国を経由してベトナムに入ってきたパターン。

ベトナム語漢越意味
ý thức(イートゥック)【意識】観念、意識
ngân hàng(ガンハン)【銀行】銀行
thần kinh(タンキン)【神経】神経
đại biểu(ダイビェーウ)【代表】代表
năng động(ナンドン)【能動】能動的な

「日本➔中国➔ベトナム」というルートで漢語が伝来

ベトナム語に漢語が大量に取り入れられたのは北属期(紀元前111年〜938年)に加え、もうひとつ19世紀末から20世紀のはじめにも和製漢語(日本で作られた漢語)が中国を経由してベトナムに入ってきた。「経済」「社会」「政治」という単語はなんだか昔からありそうなイメージだけど、これら和製漢語は明治時代に生まれた日本語であり、それ以前には存在しなかった言葉である。

和製漢語は明治時代初期に欧米の文化、学問、概念などを日本語に土着化させるため、当時の学者が学術用語などを翻訳する形で生まれた。それらの和製漢語を中国が逆輸入する形で取り入れ、さらに中国からベトナムまで伝わったのである。

「ベトナム社会主義共和国」は日本製?

ベトナムの正式名称は「ベトナム社会主義共和国」。ベトナム語で「cộng hòa xã hội chủ nghĩa Việt Nam 」という。「cộng hòa【共和】」も「xã hội【社会】」も「chủ nghĩa【主義】」も全部和製漢語からきている。他にも「cộng sản【共産】」、「giải phóng【解放】」、「nhân dân【人民】」、「cách mạng【革命】」、「dân tộc【民族】」などベトナムの政治体制に必要な概念も多くは和製漢語由来である

もし日本が和製漢語を作っていなかったら「ベトナム社会主義共和国」という国はできていなかったかもしれない。

場合は「ジョウゴウ」と読む!?

和製漢語中国経由パターンの漢越の一部におもしろい発音の現象がみられる。

それは日本語では訓読みされている漢語がベトナムの漢越では音読みの発音に従っていることである。例えば「場合」は日本語では「バアイ」と訓読みするが、ベトナム語では「trường hợp(チョンホップ)」と「場合」を音読みしたときの「ジョウゴウ」に近い発音になる。

また「手続」も「thủ tục(トゥートゥック)」と訓読みの「テツヅキ」ではなく音読みの「シュゾク」に近い発音になる。この現象は中国語でも同様にみられる。

これは中国語やベトナム語に日本語の訓読みがないからである。訓読みは日本人が漢字に日本語の訳を当てた読み方なので、他の国にないのは当然といえば当然である。

③ベトナム製漢越パターン

日本人が作った漢語もあるならベトナム人の手で作られた漢語ももちろんある。

ベトナム語漢越意味
lịch sự【歴事】礼儀正しい
du lịch【遊歴】旅行する
quan trọng【関重】重要な、大切な
ích kỷ【益己】わがままな、自己中な
suy nghĩ【推擬】考える

漢字の知識を最大限に生かせ!

これらのパターンはベトナム語だけみるとピンとこないが漢字に直してみるとわかりやすくなる。なぜ【歴事】が「礼儀正しい」という意味になるのか、[歴]という漢字には「順序立てる、整える」という意味がある。【歴事】は”物事が整っている”から「礼儀正しい」と考えることができる。

また【遊歴】で「旅行する」という意味になるのも、漢字の[遊]は遊ぶという意味の他に「ぶらぶらする、歩き回る、遠出をする」という意味もある。”歴史を歩き回る”から【遊歴】で「旅行する」と連想できる。

このように漢越がわかれば連想ゲームのようにその単語をイメージできて覚えやすくなる(漢字の勉強にもなる)。

我々日本人は「海」という漢字の字面を見て、青く広い海洋を思い浮かべることができるように、漢字の形を見るだけでパッとその字のイメージや意味をすぐに想像することができる。もともと持っている漢字の知識を最大限に生かしてベトナム語の単語を攻略しよう。

④逆さ読みパターン

中国語の漢字の語順に従ってたり、ベトナム語文法の語順にならっていたりして、日本人の感覚からすると漢字の語順が逆になっている漢越もある。

ベトナム語漢越意味
giới thiệu【介紹】紹介する
hòa bình【和平】平和(な)
ngoại lệ【外例】例外
trưởng thành【長成】成長する
sở trường【所長】長所

ベトナム語を日本語に訳す場合、文末から文頭に逆に訳しあげていくのが基本である。なので漢越も後ろから前の語順になる場合もある。

逆になっているので間違えやすいが、このパターンの漢越はそんなに多くない。逆さ読みの漢越に出会ったらその都度その単語を覚えていけば十分に対処できる。

⑤中国語そっくりパターン

ベトナム語を漢越に直した時に、中国語と同じ漢字を使っているパターンもある。

ベトナム語漢越意味
công ty【公司】会社
hành lý【行李】荷物、旅行かばん
mỹ【美】アメリカ
hộ chiếu【護照】パスポート
kết thúc【結束】終了する

筆者が台湾へ旅行しに行ったとき、中国語をみてベトナム語の漢越と同じものが結構あることに驚いた。もともとベトナムには日本以上に相当量の漢語が中国から入ってきてるので、漢字が中国語とそのままのパターンがあるのはあたりまえといえばあたりまえだ。

だから中国語を知っている人はベトナム語の勉強に相当有利であるベトナム語の漢越を学べばついでに中国語の勉強にもなってたりして一石二鳥かもしれない。

⑥純粋ベトナム語+漢越合体パターン

 通常ベトナム語の2文字の単語は[純粋ベトナム語+純粋ベトナム語]か[漢越+漢越]の場合が多いが、[純粋ベトナム語+漢越]もしくは[漢越+純粋ベトナム語]のミックスされたパターンも存在する。

ベトナム語意味純粋ベトナム語漢越
chung cưマンションchung=一緒に…するcư=【居】
chủ nhà家主nhà=家chủ=【主】
động đất地震đất=大地、土地động=【動】
mắt kính眼鏡mắt=目kính=【鏡】
lạc rang落花生rang=あぶる、炒めるlạc=【落】

このように単語を分解してみるとなぜそのような言葉ができたのかわかってくるし、その単語も連想して覚えやすくなる。2文字や3文字の熟語に出会ったら、面倒くさがらずに1文字ずつ辞書で調べることをおすすめする。単語の定着率がぐっと上がるはずだ。

まとめ

現代ベトナム語と漢越は切っても切れない密接な関係にある。同じ漢字文化圏として日本語の漢語とも多くの共通点を持つ。だからこそ、その共通項を生かして日本語の漢字の知識をベトナム語の勉強に生かそう。

ベトナム語の勉強では常に漢越を意識せよ。それがベトナム語を効果的に習得する第一歩になる。

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