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vol.21 北部弁でも南部弁でもない発音基準

vol.19であなたが訪れたり住んでいる地域に合わせた言葉、発音を勉強し、柔軟に発音を使い分けたほうがいいと述べました。しかしそれでもまだどちらの発音を勉強したらいいか迷っていたり、基準なるものが欲しいといった方もいるでしょう。実はベトナム語には北部弁にも南部弁にも属さない発音基準というものがあります。その名も「正書法発音」(ベトナム語でphát âm chính tả【発音正写】)といいます。

正書法発音とは

正書法発音とはベトナム語のアルファベット表記に沿った発音のことです。ベトナム人は小学生の時に学校の先生からこの発音基準を習わされます。しかし日常生活ではその地域で話されている方言を使うので、多くのベトナム人はこの発音基準を知ってはいるけど、普段の会話で正書法発音はしません(できない)。ごく一部の訓練した全国放送のアナウンサーなどがこの発音を使っています。

例えば子音のr-、gi-、d-は北部弁、南部弁、正書法でそれぞれどう発音されるのか見てみましょう。

・北部弁:すべて「ザ」行、
・南部弁:r-は英語のrのように舌を巻く「ラ」行、gi-とd-は「ヤ」行
・正書法発音:r-は舌を巻く「ラ」行、 gi-は「ザ」行、d-は「ヤ」行。

北部弁と南部弁ではアルファベット表記が異なるのに同じ音があります。それに対して、正書法発音はアルファベット1つに必ず1つの音」という規則があるので、北部弁や南部弁のように表記が異なるのに同じ発音をする、というパターンがありません。

北部弁と南部弁のミックス

正書法発音の聞こえ方はちょうど北部弁と南部弁がミックスされたようなかんじになります。つまりこの基準を覚えれば北部弁、南部弁ともに対応しやすくなります。正書法発音は北部弁でも南部弁でもないどっちつかずの発音ともいえますが、どちらの方言にも偏らないまさに基準にふさわしい発音だとも言えます。

この正書法発音は日本のベトナム語の参考書には記載されていません。これから子音の発音を紹介するなかで、北部弁、南部弁だけでなく、正書法発音も合わせて紹介するので参考にして下さい。