ホイアンから南に40kmのところに「道の駅ビンアン(Trạm dừng nghỉ Bình An)」があります。
ここはJICAと千葉県南房総市が2010年から6年間にわたって道の駅を活用した地域振興プロジェクトを実施し、計3700万円以上が投じられました。
しかし、プロジェクト終了からわずか数年で客数が激減し、現在道の駅は破産、建物は廃墟と化し、ごみが散乱しています。

なぜこうなってしまったのか、まずは日本が関わった「道の駅ビンアンプロジェクト」の経緯を時系列で見ていきましょう。
道の駅ビンアンの変遷
・2010年1月:ベトナムの地元企業と日本の平和財団が共同で道の駅ビンアンの建物を完成させる。
・2010年7月~2013年3月:千葉県南房総市がJICAの草の根技術協力事業を通じて、道の駅の知見を活用した地域振興計画を実施する。建物の増築や整備などを含む総事業費は1700万円に上る。
・2013年7月~2016年3月:同市とJICAが前述のプロジェクトの追加・継続としてさらに約2000万円を投じ、道の駅を活用した農業の地域振興プロジェクトを行う。
・2016年:「未来世紀ジパング」で、道の駅の大盛況ぶりが取材される。
・2017年7月:トマトが初めて道の駅を訪問、それなりににぎわっていた。


↓2020年に道の駅を訪れた時の動画
・2023年7月:トマトが道の駅再々訪。道の駅は廃墟と化し、建物の中には放置された備品とゴミが散乱していた。現在運営されているのはガソリンスタンドのみ。

道の駅の客が消えた原因
南房総市が6年間にわたって関わった道の駅プロジェクトは、終了からわずか3年余りの2019年に客数が激減し、現在道の駅は壊滅しています。
道の駅の客が消えた原因として、新たに高速道路と海岸道路の建設により、道の駅沿いの国道一号線の交通量が減少したことが挙げられます。
しかし、高速道路建設は2013年の第二期プロジェクト開始前からすでに計画されていたもので、日本側もこのことを知っていたはずなのに道の駅プロジェクトはそのまま進められました。
2019年の「未来世紀ジパング」で、プロジェクト責任者の加藤さんは高速道路建設は予見できなかったと語っていましたが、果たして真実なのでしょうか。

ベトナム交通事情の無理解も原因か
ベトナムでは飲食店とバス会社が結託し、バス会社が乗客を店に立ち寄らせる見返りに、店から飲食代を安くしてもらったり、バス会社がマージンを受け取るという構造があります。
そのため、長距離バスの運転手は特定の決まった飲食店にしか立ち寄りません。この状況を踏まえれば、道の駅はバス会社やトラック会社ともっと協力して固定客を集めるべきだったのかもしれません。
また、ベトナム人はトイレ休憩程度では道の駅などに立ち寄らない傾向があります。バスを路肩に止めて立ちションなどでトイレを済ませることも多く(バイク旅をしているとこの光景を非常に多く見かけます)、女性でさえも隠れて野ションをします。
このように道の駅が地元コミュニティと十分に結びついていなかったことや、ベトナム特有の長距離交通事情を理解していなかったことが、道の駅プロジェクトの失敗の一因となったと考えられます。
自分たち好みの日本式道の駅をそのまま押し付け、ベトナム側も日本が金を出してくれるからというのでその方針に従い、結果として客を集められず、破産までつながってしまったのでしょう。
日本人はODAの使い道について知る権利がある
また、JICAの草の根技術協力事業の根本的な問題は「建物ありき」「金ありき」から始まる、地元発ではない提案型プロジェクトだということです。これは日本側から「こうしてみてはどうか」という提案に基づいたもので、地元住民が「こうしたい」というニーズから出てきたものではありません。
JICA、南房総市、ベトナムの受け入れ機関など、プロジェクト終了後も効果の検証をせず、道の駅が赤字になっても、失敗して倒産しても誰もその責任を取りません。結局、地元が日本の提案に翻弄され、この無様な廃墟を抱える結果となりました。
現在ベトナム全土に多数の日本式の道の駅が存在しますが、このビンアン道の駅だけでなく、バクザン省の道の駅や、ホアビン省の道の駅も同様に失敗し、廃墟となっています。
ODA(政府開発援助)は元をたどれば日本人の税金から出ている部分もあり、日本人はこのような国際協力プロジェクトの中身や問題点も含め広く情報を知る権利があります。
しかし、道の駅がベトナムの地域社会に適応し、どれだけの成果や利益を上げているのかについての情報はほとんど公開されていません。これらの事実を踏まえたうえで、日本のODAの在り方について、日本人は検証し、再考する必要があるでしょう。


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