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vol.101 [慣用句] 財産が自分の身代わりになる

今回は「của đi thay người」という慣用句を紹介します。

語彙解説

của đi=財産がなくなる

いきなり先頭にcủaがあることに驚くかもしれません。なぜなら通常củaは「A của B」という構造で「BのA」という所有、所属の意味を表す前置詞だからです。英語のofと同じ使い方をします。

しかしここでのcủaは「所有物、財産」という意味の名詞です。もともとcủaの意味はこっちのほうが先です。「A của B」は「AがBの所有物である」ということから「BのA」という意味に転化したのです。

điは超基本動詞の「行く」ですね。つまりcủa điで「財産が行く、行ってしまう」⇒「財産がなくなる」という意味になります。

thay người=人の代わりに

thayも基本動詞で「交換する、代わる」という意味です。ngườiも「人」という意味の簡単な名詞です。

慣用句の意味

以上のことから「của đi thay người」を訳すと「財産が人の代わりになくなる」となります。

この慣用句は物が盗まれたり壊れたりしたけど、人体(命)に何も問題がないときにベトナム人が投げかける慰めの言葉です。

例えば強盗被害にあったけど自分の命までは奪われなかったとか、交通事故でバイクはボロボロになったけど、自分の体に何も別状がない時などに「của đi thay ngườiだよ、よかったね」みたいに使います。

実際には物が盗まれたり壊れたりするのは不運なことです。
しかし、自分の命は助かった、財産(自分の物)が代わりに自分の命を守ってくれたんだから実はあなたは幸運なんだよ、ということを表しています。

命が一番大事

自分の命というものが一番大事で、それさえあればまた財産はいくらでも作ることができます。

つまり「của đi thay người」は沖縄的に言うなら「ぬちどぅ宝」、明石家さんま的に言うなら「生きてるだけで丸儲け」といったかんじになるでしょう。

このように仮に自分の財産を失ったとしても、「まぁ生きてるからなんとかなるでしょ」みたいな超ポジティブ思考ができたらいいですね。

ベトナム人が日本人よりも幸せそうにかつポジティブに生きているように見えるのは「của đi thay người」のような考えが根本にあるからなのかもしれないですね。