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vol.509 ベトナム語と2音節語

ベトナム語は2音節語が多い

ベトナム語の単語の多くは1音節もしくは2音節の熟語で構成されています。

音節とはひとつの音のかたまりの単位のことで、「母音もしくは母音と子音で構成された音のまとまり」を指します。日本語では基本的に「あ」「か」「さ」などの「ひらがな1文字を1音節」として考えます。

ベトナム語では1単語を1音節として考えます。例えばtôiやănは1音節語、Việt Nam(ベトナム)や、chú ý(注意)などは2音節語、ký túc xá(寮)やđại sứ quán(大使館)などは3音節語になります

ベトナム語の単語で圧倒的に多いのが2音節語で、その次に多いのが1音節語です。3音節語以上の単語は実は非常に少ないです。

そしてベトナム語の多くの1音節語は2音節語にすることができます。1音節語を2音節語にしたものをベトナム語でtừ láy(双音節語)といいます。

例えばvui(楽しい)をvui vẻに、mạnh(強い)をmạnh mẽに、giữ(保つ)をgiữ gìnにするといったかんじです。

ここではシンプルにtừ láyを「1語を2語に変化させた単語」と理解しておけば十分です。

1語を2語にする理由

1単語を2単語に増やす主な理由は「単語を長くして聞き逃しを防ぐ」ためです。

ベトナム語は1単語が1音節でできているため、1単語当たりの音の長さはかなり短いです。例えば日本語の「たべる」は3音節の単語ですが、ベトナム語はănの1音節の単語になります。この場合、ベトナム語の単語は日本語の3分の1の短さになります。

他にも「とうもろこし」は6音節の単語ですが、ベトナム語ではbắp(もしくはngô)の1音節の単語なので、ベトナム語の単語の音の長さは日本語の6分の1になります。

ベトナム人にとっては日本語の単語は長ったらしく感じる一方で、日本人にとってはベトナム語の単語は音がかなり短く、一瞬で音が過ぎ去ってしまう印象を受けます。ベトナム語は1語あたりの密度が高いともいえます。

このように1単語当たりの音の長さが短ければ短いほどうまく聞き取れなかったり、聞き逃したりする可能性が出てきます。

そのため1単語を2単語にすることによって、音の長さを2倍にし、1単語の時よりもその単語をはっきりと聞き取りやすくなります。

つまりtừ láyは「聞こえの度合い」を長くして相手の聞き逃しを防ぎ、コミュニケーション上の齟齬を減らす役割があるということです。

また、từ láyにすることで音が長くなり、その単語の文中での占める割合が増えます。つまりtừ láyはその単語を文中で強調させる役割も持ちます。

その他のtừ láyの例

・rõ(明らかな)→rõ ràng(明白な、はっきりとした)

・rộng(広い)→rộng rãi(広々とした)

・khó(難しい)→khó khăn(困難な)

このようにtừ láyは純粋ベトナム語の形容詞に表れることが多いです。

ベトナム語は偶数音が好き

日本語の五・七・五のようにベトナム語にも心地よい語数というものがあります。

ベトナム語で最も多いのは2音節語なので、偶数単位で構成された単語、文章、読み方がリズム的に心地良いとされています。そのため詩や文学的文章などは6単語や8単語で1文とするなど、読み手にとって語感の良い偶数で文が構成されていることが多いです。

他にも日本語を話すベトナム人の間で日本語の3音節以上の単語を2音節に省略して言う傾向があります。例えば名古屋(Na Go Ya=3音節語)をNa Goと言ったり、西川(Ni Shi Ka Wa=4音節語)をNi Shiと言ったりします。

これは3音節語や4音節語の単語がベトナム語にほとんどなく、冗長に感じるため、2音節語に縮めて快適なリズムにするためだと考えられます。

このようにベトナム語は2語の熟語が多いことや、ベトナム語文は偶数が好まれると意識しておくと、文章の音読やリスニングの時に役立つことがあります。みなさんも覚えておきましょう。