ベトナム語の否定語といえばkhôngやchưaが有名ですが、実はベトナム語の漢越語の中にも否定的意味を持ち、多くの熟語を形成する単語があります。今回はその中でもよく使う否定語の要素を持つ漢越語を3つ紹介します。
bất【不】
bấtは【不】を表す漢越語です。日本語でも「不安」「不公平」「不問」など「不〜」は打ち消しの語で、否定する意味を持ちますね。ベトナム語でも同様の使い方をします。
・bất thường【不常】=普通でない、異常な
・bất ngờ【不疑】=思いがけず、不意の
※ngờは辞書などでは純粋ベトナム語扱いされていますが、もとは漢越語のnghi【疑】が変化した語だといわれています。
・bất đắc dĩ【不得已】=やむを得ず〜する
「bất đắc dĩ (phải) + V=やむなくVする」という助動詞のような形で使います。漢字を逆から”已”(や)むを”得”ず(“不”)と読むと覚えやすくなります。
・bất công【不公】=不公平な
・bất lịch sự【不歴事】=無礼な、無作法な
※否定形でない「lịch sự=礼儀正しい」もよく使います。
vô【無】
vôは【無】を表す漢越語です。
日本語における「無〜」も打ち消しの接頭語です。「無実」「無敵」「無意識」など単語の頭について「〜ない」という意味を表しますね。
ベトナム語のvôも同じような使い方をします。熟語の最初についてvô以下の部分を「〜ない」という形で否定します。
・vô nghĩa【無義】=無意味な
・vô ý thức【無意識】=無意識の
・vô duyên【無縁】=気配りがない、失礼な
・vô cùng【無窮】=限りなく、極めて、めっちゃ
※cùngの【窮】という漢字には「きわみ、はて」という意味があります。つまり【無窮】で「限りのない、果てしない」となり、程度をかなり強める表現として使われます。
ちなみにvôは動詞の「入る」という意味もあります。vôは「vào」が口語調に変化した単語で、主に南部で使います。もちろんこの場合は漢越語の【無】ではないので否定的意味は持ちません。
phi【非】
非も「非常」「非合法」「非常勤」など「それにあたらない、それ以外である」という意味を持つ否定の接頭辞です。同じ使い方をするベトナム語のphi【非】も様々な熟語を持ちます。
・phi pháp【非法】= 非合法の、法律に違反した
・phi khoa học【非科学】=非科学的な
・phi thường【非常】=普通でない、並み外れた
・phi lý【非理】=不合理な、理屈に合わない
・phi chính phủ【非政府】非政府の、政府機関に属さない
※NGO(非政府組織)はベトナム語でtổ chức phi chính phủ【組織・非政府】といいます。
また、phiは【非】の漢字の他に【飛】の漢字も持ちます。
・phi hành gia【飛行家】=宇宙飛行士
・phi công【飛工】=パイロット
・phi trường【飛場】=飛行場
※sân bayの昔の言い方
これらbất【不】、 vô【無】、phi【非】を使ったベトナム語は他の漢越語と組み合わさって熟語になることで初めて否定的意味を持ちます。khôngやchưaのように単独の否定語としては使えないので気を付けて下さい。
また、日本語ではよく使う否定語の「未〜」はベトナム語でvị【未】ですが、この漢字の単語はほとんど使わないので覚えなくてかまいません。
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