vol.250 [書評]『外国語上達法』千野栄一

前回宣言したとおりトマトがオススメする本の書評(レビュー)を書きたいと思います。

第一弾は千野栄一『外国語上達法』(岩波新書)という本です。

この本は外国語の勉強法やポイント、考え方などを著者の経験を交えながらわかりやすく解説した本です。

この本が発売されたのは1986年(トマトが生まれる前!)と、かなり古い本ですが語学学習の本質を捉えた名著で、31年経った現在でも本書に書かれている方法などは十分に通用します。

ベトナム語以外の語学学習にも広く応用できるので他の言語を勉強している人にもぜひ一読して欲しい一冊です。

以下トマトが面白いと感じたりビビッときた箇所を引用してそれにコメントやツッコミする形式で進めていきます。

忘れることを受け入れる

「語学の習得というのは、まるでザルで水をしゃくっているようなものです。絶えずしゃくっていないと、水がなくなってしまいます。水がどんどんもれるからといって、しゃくうのを止めるとザルははぜてしまうのです」……語学の習得で決して忘れてはいけない一つの忠告は「忘れることを恐れるな」ということである。 p9

繰り返しは学習の母である。 p51

繰り返しは忘却の特効薬。 p198

人間は忘れる生き物です。その当たり前の前提を受け入れつつ、それに抗う唯一の方法として筋トレのように絶えず同じことを何度も行う必要がある、と本書は説いています。

語学に必要なもの

「先生、語学が上達するのに必要なものはなんでしょうか」
「それは二つ、お金と時間」 p38

この本の一番の名言。お金と時間って身も蓋もないことを言い切っちゃうところがシビアで清々しい。

今ではネットの発達で語学も無料に近い形で学べるようになったけど、自己投資にケチケチしているような人は上手くなれないのもまた事実です。

覚えなければならないのはたったの二つ。語彙と文法。 p41

これも実に単純明快。外国語は単語とそれを並べ替えるルールさえ知っていればできるようになるんだよってことですね。

まぁベトナム語にはもうひとつこれに「発音」が加わりますがね。

外国語を学ぶためには、次の三つのものが揃っていることが望ましい。その第一はいい教科書であり、第二はいい教師で、第三はいい辞書である。 p42

ベトナム語においては、いい教科書といい辞書が非常に少ないのが問題です。

ではいい教師は? もちろんトマトがいるから安心さ!

辞書の大切さ

辞書が語学の習得にどれほど大切であるかは明らかである。 p44

新しい語学の初歩の段階では、辞書はそれほど重要な役割を演じない。辞書が重要な意味を持ってくるのは中級以後で、上級にいってからは辞書の良し悪しと、その引き方の巧拙が大きな意味を持ってくる。 p44

辞書が文化の一翼を担っている重要な作品であることは、今さら断ることもないくらいよく知られた事実である。 p44

ぶっちゃけ辞書って語学学習でめっちゃ大事ですよ。勉強が進めば進むほど、辞書の良し悪しで語学力に差がついたりしますからね。

単語は仕分けしろ!?

いくら覚えてもきりがない単語の学習には、目安が必要である。 p54

自分はこの外国語で何語覚えるか、を定めるのである。 p54

すなわち、三千語覚えれば、テキストの90%は理解できる事になる。そして残りの10%の語は辞書で引けばいい。 p55

単語を覚える場合、どのような単語を覚えるかで、同じ三千の語を覚えた場合でも学習効果に大きな差があることを注意してきたつもりである。 p64

あなたが学習しようとしている言語に語の頻度数を示す資料があったら、それは絶対に見る必要がある。 p64

どの語を覚え、どの語を積極的に見逃すかの判断は大切である。 p64

単語学習といえばとにかくたくさん覚えなければいけないイメージがあります。

しかし本書は逆に、単語学習に「見切り」をつけ、積極的に「覚えない」という提案をしています。この逆転の発想はトマト的には結構新鮮でした。

あまり使わない単語は辞書で対応する、というのも前述の「辞書がなぜ大切なのか」という理由にもつながります。

外国語会話の本質

完璧主義者がよく陥る、間違いをしないために黙ってしまうことである。「沈黙は金」という諺はあるが、会話を学習するときに黙ってしまったのでは、本末転倒としか言いようがない。 p168

人は間違いを重ねることで学んでいく p168

会話では「あやまちは人の常」の精神が大切なのである p168

本当に会話が上手になるにはどうしたらよいかを、語学の神様と言われるS先生にお尋ねしたことがある。一瞬、目をつむって考えておられた先生は「いささかの軽薄さと内容だな」と答えられたが、この二つはもっとも大切なポイントなのである。 p175

単語力や文法力よりもコミュ力があってちょっと恥知らずなバカのほうが会話においては大事だということです。

会話というものは自分が相手の人に伝えたいことを伝え、相手の人が伝えたいと思っていることを聞くことであって、自分がたまたまその外国語で知っている句を使ってみることではない。 p172

あの人は単語を知っているからとか、気の利いた表現をするからといって会話をするのではない。会話をすることによって新しいことを知り、考えさせられ、喜びを得るからこそ、話をするわけで、ここまで来れば、もう外国語でする会話と日本語でする会話との間には何らの差もないのである。 p176

巷にあふれる日本人とベトナム人の交流会とかには、自分の会話力を上達させたいがために日本人に話しかけてくる自己満足型のベトナム人が結構います。

そんな人が話すのは定形的な表現に定形的な内容、ほとんどが薄っぺらくて面白くありません。

それは相手あってこその会話だということを忘れているからなのでしょう。

言語が上手くなりたきゃ言語以外のことを学べ!?

言語はそれだけで単純に使われるのではなく、必ず何かある状況の中で使われる。この状況は、色々な情報を言語に与える。従ってこの状況がよく分かっていれば、その言語の理解が容易になる。 p184,185

その外国語を支えている文化、歴史、社会…という様々な分野の知識を身につけておけば、それは外国語の理解の際に、まるでかくし味のようにあとから効いてくる。 p193

本書では文化、歴史、社会などの言語の基盤となっている言語外知識のことを「レアリア」と呼んでいます。

そのレアリアが外国語学習に与える影響は決して小さくない、と述べています。

トマトのベトナム語の先生も、「最終的にベトナム語が上手になれるかはベトナムという国をどれだけ理解できたかによる」と言っていました。

みなさんもベトナム語が上手くなりたければベトナムという国、人、文化など「ベトナム語以外」のことをもっと勉強しましょう!

語学学習の指針を持ちたい人におすすめ

千野栄一『外国語上達法』(岩波新書)はただ語学を漫然と勉強している人にとっては再考するキッカケになったり、今後の学習の羅針盤ともなる優れた本です。

『外国語上達法』は現在アマゾンや楽天でも買えるので気になった人はポチッとしてみてくださいな。

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)

外国語上達法 (岩波新書)

  • 作者:千野 栄一
  • 出版社:岩波書店
  • 発売日: 1986-01-20
これくらいの本を買って読むくらいできないとベトナム語は上手くなれませんよ。だって上達に必要なのは「お金と時間」ですからね(笑)。

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