定期購読マガジン「トマトのベトナム語学習ラボ」はこちら

vol.519 ベトナム人の恋人ができればベトナム語は上手くなるのか?

「あなたの恋人はあなたの語学教師ですか?」と聞かれたらどう答えますか?

これは、語学習得のコミュニティでよく聞かれる質問で、特に「その言語をマスターするためにはその国の恋人を作ること」というアドバイスが頻繁に飛び交います。しかし、このアドバイスは本当なのでしょうか?はたしてベトナム人の恋人ができればベトナム語は上手くなるのでしょうか?

この問いに対する一般的な誤解は、恋人がいれば必然的にその人の母国語を自然に学べるという考え方です。しかし、これは必ずしも真実ではありません。多くの日越カップルを見てきた私の経験から言えば、日本人側でベトナム語が上手い人はほとんど見たことがありません。反対に、ベトナム人が日本語を話せるパターンが圧倒的に多いのです。

私自身もベトナム人と結婚はしていませんが、普通にベトナム語を話すことができます(笑)。ではなぜ恋人から学ばないほうがいいのでしょうか? それにはいくつかの理由があります。

まず、恋人との関係性においては、学習者のミスを許容する傾向があります。これは、二人の間にある愛情が、学習者の未熟な発音や文法の誤りを無視させるからです。このような状況下では、恋人はあなたの下手なベトナム語に慣れてしまい、未熟な状態のまま上達しなくなるリスクがあります。

さらに、恋人とケンカしたときには、そのストレスが言語学習に悪影響を及ぼす可能性があります。情緒的な問題が学習の障害となり、モチベーションを下げることもしばしば起こり得るでしょう。ましてや恋人と別れてしまったらベトナム語の勉強どころではないかもしれません。

語学学習は継続が大事です。継続させるためには学習を安定させる必要があります。波のある恋愛感情を語学学習に持ち込むと不安定になりやすく、継続性にも悪影響を及ぼします。

それでも、ベトナム人を好きになった。ベトナム人の恋人を作りたいからベトナム語を学ぶという動機や、恋愛をモチベーションに学習するのは悪いことではありません。実際、多くの人々が恋愛を通じて新しい言語を学び、それが彼らの学習の推進力になっているのも確かです。しかし、重要なことは、恋人に全てを頼らず、自分自身で学習をコントロールし、努力することです。

この点を踏まえて、ベトナム人の恋人ができればベトナム語が上手になるかという問いには、一概には答えられません。恋人がいることは、日々の会話を通じて実践的なスキルを磨く機会を提供しますが、それだけで言語を完全に習得することは難しいでしょう。また、恋人から学ぶことのリスク、恋人との関係性が学習の障害となる可能性もあるということを頭に入れておくべきです。

だからこそ、恋人が教師の役割を果たすことを期待するのではなく、プロの教師や学習コミュニティ、教科書や辞書、動画教材など、多角的な学習法を活用しながら、恋人とのコミュニケーションは、その学習過程の一部であると捉えるべきです。

言語習得は長い旅です。ベトナム人の恋人がその旅をより楽しく、豊かなものにしてくれるかもしれませんが、その旅の成功は、最終的にはあなた自身の継続、安定、努力によって達成できるものなのです。