ベトナム人が外国人のベトナム語発音について様々な意見や感想を言う時があります。その中でもベトナム語学習者にとって「かわいい」という評価がどういう意味を持つのか、その背景を考えてみましょう。
「かわいい」は「ずれている」!?
ベトナム人から「発音がかわいいね」と言われた場合、多くの人はそれを褒め言葉として受け取るかもしれません。しかし、実はこれは発音が標準的ではない、あるいは独特であることを示唆することが多いのです。つまり、「発音がかわいいね」とは「発音がずれてるね」の裏返しとも捉えることができます。
例えば北部ベトナム人が、ベトナムの南部の発音に対して「かわいい」と言うことがよくあります。その理由として、南部の声調は北部よりも音の上昇や下降がゆるやかで、柔らかな音が特徴的だからです。トゲのない、波打つような丸い山のイメージに近い南部の声調は、北部のカクカクとした声調からは大きくずれています。
また、南部弁では問う声調(ả)と倒れる声調(ã)が混同される現象が起こるため、北部弁の明瞭な6つの声調と比べて、柔らかくあいまいに感じる人も多いからです。これが、一部の北部の人々にとって「やや言葉足らずのかわいい発音」として聞こえる原因となります。
しかし、これはあくまでベトナム人同士の話であって、ベトナム語を学んでいる外国人にとっては、この「かわいい」という評価は、発音や話し方がまだ完璧ではないことの証拠であると捉えることが重要です。
外国人がベトナム語を話す際、スピードが遅かったり、難しい言い回しを使えなかったり、発音をミスしがちです。これはネイティブスピーカーの幼児が話すように聞こえることが多いため、「幼児的なベトナム語→かわいい」という評価につながってしまうのです。
実際、ベトナムの幼児は小学校に通うまで発音が完璧ではありません。両親のベトナム語を耳から学習しているだけなので、発音も聞き取りづらいことが多いです。学校で文字や発音をきちんと習うことで、語と音が一致し、ネイティブらしい美しい発音になっていきます。
「かわいい」と言われないために
外国人がベトナム語を話す際に声調を正確に発音できなかったり、特定の母音や子音の発音を間違えることはよくあります。音を正確に出せなかったりすると、それが幼児の舌足らずな発音(かわいい発音)のように聞こえることがあります。
「かわいい」と言われないためには、一つ一つの発音を修正し、向上させるのはもちろんのこと、特に倒れる声調(ã)や重い声調(ạ)での声帯を閉める(=「っ」音をいれる)ことや、末子音の口を閉じる発音など、終わりをきちんと意識するのも大事です。
発音の向上を目指す過程では、焦る必要はありません。最初はネイティブのように速く話す必要もありません。ゆっくりと、堂々と、ちゃんとした発音で、文法通りに従って話すことを心掛けましょう。そうすれば「かわいい」と揶揄されることはなくなります。
「かわいい」を超えろ
ネイティブが非ネイティブの発音を「かわいい」と感じる背景には、その新鮮さや違和感も影響しています。ベトナム人の中には発音が変で面白いから「かわいい」と発音をからかう人もいるかもしれませんが、それ以上に、外国人がベトナム語を学び、努力する姿に多くのベトナム人は敬意や愛情、魅力を感じています。
発音や単語を学ぶことも大事ですが、真摯に学び続け、その学ぶ姿勢をベトナム人に見せることこそが、ベトナム人からの「かわいい(dễ thương)」を「すごい(giỏi)」に変えることができる大きな要素になるでしょう。


![vol.273 [慣用句] 水を飲んだら水源を思い出せ](https://vietomato.com/wp-content/uploads/2017/08/IMG_20160923_091259-150x150.jpg)

![vol.412 [トマトのダークツーリズム案内]「サイゴンでの処刑」の現場に行ってみた](https://vietomato.com/wp-content/uploads/2019/01/PhotoGrid_1548935186020-150x150.jpg)
![vol.430 [動画×3] ①路上リスニング問題 ②近くにいる人への呼びかけ方は? ③” buồn cười “は日本語で?](https://vietomato.com/wp-content/uploads/2019/06/PhotoGrid_1560351544733-150x150.jpg)















コメントを残す