「không phận sự miễn vào」
このベトナム語をみてすぐにパッと意味がわかる方はかなりのベトナム語使いです。普通の人なら一体何を表しているのか全くわからないかと思います。
先に日本語訳を言うと「関係者以外立ち入り禁止」となります。どこがどうなってそのような意味になるのでしょうか。ひとつひとつ見ていきましょう。
không phận sự miễn vàoとは?
phận sự
phận sựとは「責任をもって行うべき仕事」とか「その人にとっての本来的な義務」といった意味の名詞です。なかなか日本語訳しづらい単語です。phận sựは漢越で【分事】で、この場合の漢字の【分】には「割り当てられたつとめ、義務」といった意味があります。親分とか子分とかの「分」と同じ意味です。
【分】の意味は「さだめ、きまり」
また【分】という漢字にはもともと「さだめ、きまり」といった意味があります。そこから派生して、「境遇」「生まれつき」「地位」「義務」とかの意味を持つようになりました。今でも普通に「庶民の分際で!」とか「分不相応な暮らし」とか「学生の本分は勉強すること」とかで使う【分】はもとは「さだめ、きまり」といった意味からきています。
それと同じようにphậnというベトナム語ももともとは漢字の【分】からきているのでその意味も「身分、地位」、「運命」といった意味を持っています。
こういうふうにすでに持ってる漢字の知識をフル活用すればなぜその単語がそのような意味を持つのかを深く知ることができます。もちろんベトナム人は漢字の知識がないのでphậnがなぜ「運命」といった意味になるのかを論理的に答えることができません。phậnはphậnでしょ?としか答えられないのです。
何だか漢字の授業みたいになりましたが本題に戻りましょう。
phận sựで「責任をもって行うべき仕事」です。が、その前に否定のkhôngがついています。名詞に直接khôngはつけられないのでcóが省略されていると考え、không có phận sựで「責任をもって行うべき仕事がない人は」と訳せます。
miễn vào
次にmiễn vàoですが、これも実は難しいです。miễnは漢越で【免】で、「miễn phí【免費】=無料にする」という単語があるように漢字の【免】には「まぬがれる、許可する」といった意味があります。免許、放免などの「免」と同じです。
そう、実は【免】にはもう一つ「しりぞける、やめさせる」という意味があります。懲戒免職や罷免といった場合の「免」と同じ意味です。だからこの場合のmiễnは「đừng=~するな」と同じ意味になります。
以上のことから
không phận sự miễn vào=責任をもって行うべき仕事、義務がない人は入るな⇒関係者以外立ち入り禁止
となるわけです。
まとめ
このようにphậnやmiễnの意味を漢字の【分】や【免】から考えると難しい単語でも意味を深く理解することができます。漢越はもととなる漢字の意味からたどってどのようにベトナム語の意味に反映されるかを調べる道具にもなりえるのです。
ベトナム語を勉強しています。最近はベトナム語の固有語に興味があります。
ベトナム語で漢語から固有語に言い直されたもので面白いものなど教えてください!
そうですね、例えば
phi trường【飛場】→ sân bay=飛行場
phi cơ【飛機】→ máy bay=飛行機
などの変化があります。普通は右の単語を使いますが実際に年配の人などは左の単語を使う人もいます。
他にも
bắc kỳ→miền bắc=北部
nam kỳ→miền nam=南部
などもあります。