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vol.507 漢越語学習のはじめかた

中国語由来のベトナム語である漢越語はベトナム語の単語学習には欠かせない知識です。しかしネイティブベトナム人は漢越語の知識がないため、漢越語そのものを教えることができません。

そのため、学習者は自力で漢越語を学習し、知識を増やしていく必要があります。今回は初心者向けに自学自習可能な漢越語の学習法を紹介します。

漢越語対応の辞書を引くことから始めよう

漢越語学習といってもその始め方はいたってシンプルです。

まず漢越語に対応している辞書を買いましょう。市販の辞書で漢越語に対応している辞書は現在『詳解ベトナム語辞典』と『五味版 学習者用ベトナム語辞典』の2冊のみです。このどちらかを買って手元に置いてください。

ネット上の辞書やアプリの辞書は漢越語に対応していないだけでなく、訳の間違いも多いのであまりおすすめしません。

漢越語対応の辞書にはそのベトナム語が漢越語である場合、必ず隣に【】で漢字が書かれています。その対応する漢字をベトナム語の意味とセットで覚えます。

つまりわからない単語があって辞書を引く際に、それが漢越語であれば「①ベトナム語 – ②対応する漢字 – ③意味」の三点セットで覚えていくということです。

例えば、du lịchという単語を辞書で調べます。するとdu lịchの意味は「旅行する」、対応する漢字が【遊歴】とのっています。

画像

その時に「①du lịch【②遊歴】=③旅行する]というふうに、「①ベトナム語 – ②漢字 – ③意味」の3点セットで覚えます。

最初の段階では【遊】=du、【歴】=lịchと単体で分けて覚える必要はありません。なぜなら漢越語の多くは二語の単語で構成されており、二語の対応する漢字をカタマリで覚えたほうが初めは効率が良いからです。

ここで注意して欲しいのは、漢越語を調べることが第一優先ではなく、あくまで普段の単語学習の一環として漢越語を利用するということです。

漢越語を辞書で調べまくる、ではなく、辞書を引いてそれが漢越語だったらその対応する漢字を覚える、といったスタンスで最初は十分です。

あくまで漢越語は普段の単語学習の補助知識としておさえておくことが大切です。漢越語に夢中になりすぎないように注意してください。

とはいえ、辞書を引いてその単語の意味に加え、対応する漢字も覚える、というのは最初は地道で大変な作業です。

しかしある程度漢越語を覚えてくると、この単語は漢越語っぽいな、この単語は純粋ベトナム語っぽいなといった感覚がわかるようになってきます。漢越語は知識が貯まれば貯まるほど後々楽になっていきますので最初は辛いですが頑張ってください。

漢字そのものの意味を調べることも大事

漢越語はその単語の意味を理由づけして覚えるのに最適です。そのため、漢字そのものの知識も必要になってきます。

例えばさきほどのdu lịchは【遊歴】という漢字が使われていますが、【遊歴】でなぜ「旅行する」という意味になるのでしょうか?

「遊」と「歴」の漢字を調べると、「遊」は「遊ぶ」という意味の他に「他国へ行く、動き回る(ex.周遊、外遊)」という意味もあります。

「歴」も「経過する(ex.歴史)」という意味の他に、「一つ一つ順をおっていく(ex.遍歴、歴訪)」という意味もあります。

つまり【遊歴】という漢字には「遠くにある色々な所を順に動き回る」という意味を持っています。だから「旅行する、観光する」という意味になるのです。

このように漢越語を利用することによって単語を理由づけして覚えることができます。これが漢越語学習の最大の強みです。単調になりがちな単語学習を他の要素と関連づけることによって単語の定着率がぐんと上がります。

「しりとり式」「クラスター式」でさらなる定着を

漢越語をある程度覚えてくると、色々な単語に繰り返し出てくる漢越語があることに気が付きます。それらを「しりとり式」や「クラスター式」で他の単語と紐づけして覚えていくという方法も効果的です。

しりとり式


Chú ý【注意】=注意する

ý định【意定】=~するつもり

định hướng【定向】=方向を定める

hướng dẫn【向引】=案内する

dẫn đầu【引頭】=率いる

上の例のように、最後の単語を次の最初の単語につなげる「しりとり」形式で遊び感覚で覚えることができます。

そうすると連鎖するように次の単語がスルスルと出てきて、一気にまとめて漢越語を記憶できます。

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クラスター式

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例えばý【意】という漢字を中心(クラスター)にして、そこからýを使った熟語をつなげていき、ý【意】を一つのグループでまとめて覚えていく方法です。こちらも連想ゲームのように芋づる式で単語を広げていくことができるため、漢越語の定着率が上がります。