ベトナム人と飲み会に行ったことある人なら誰でも知ってる乾杯のフレーズ「モッ!ハイ!バー! ヨー!」の“ヨー!”とはいったいどういう意味なのでしょうか?
モッ, ハイ, バーはベトナム語で1, 2, 3という意味です。これはみなさんもご存知でしょう。
ちなみにモッ, ハイ, バーは乾杯以外にも写真を撮る時や複数人で重い物を持ち上げたりする時の合図にも使われます。便利な掛け声ですね。
では乾杯の時の最後のヨー!もただの掛け声なのでは?と思うかもしれません。
しかしこのヨー!にはちゃんと意味があります。
ヨー=vô=vào=入れる
ヨーはベトナム語でvôと書きます。
vôはふつう【無】という漢越語で、「〜がない」という意味で使われますが、「vào=入る、入れる」が口語調に変化した単語でもあります。
特に南部でvào→vôの変化が顕著にみられます。vàoとvôを実際に発音してみるとわかりますが、vôのほうが短く発音しやすいので主に会話やチャットで多用されます。
何をvàoするの?
「vô=vào=入れる」なので、何を入れるかと言ったら、それはもちろんお酒やビールを腹に“入れる”ことになります。
つまり「モッ!ハイ!バー! ヨー!」は「1, 2, 3, (お酒を)入れるぞー」と言っていたというわけなのですね。
もしくはvàoという動詞の性質から考えて、ビールジョッキをみんなの中央(輪の中)に“入れる”と考える説もあります。
いずれにせよ「ヨー」は「vào=入れる」からきているということを覚えておいてください。
でもなんで「vô」の発音はヴォーじゃなくてヨーになるの?
さきほどvôは南部でよく使われると言いました。
ベトナム語の子音[v-]は確かに英語のv-のように「ヴァ」行で発音しますが、南部弁では日本語の「ヤ」行で発音します。
だから南部弁ではvôは「ヨー」という発音になるわけです。
北部ではなぜゾーになる?
北部での乾杯の掛け声は「モッ!ハイ!バー! ゾー!」となります。ゾーはdôやzôと書きます。
実はこれももとになっているのは南部弁のvôです。
南部弁ではヤ行で発音する子音は[v-]の他に[d-]もあります。だからヨーは「dô」とも表記できます。
そしてこの子音[d-]は北部弁では日本語の「ザ」行で発音します。
よって「dô」は北部では「ゾー」と言うわけです。
つまり南部において音が似ていることによるスペルミスでvô→dôの変化がおこり、dôの表記で北部の人がそのまま北部弁で読んだら「ゾー」となったというわけです。
北部では「ヤ」行音が「ザ」行音に変化する、とシンプルに考えてもいいでしょう。
まとめ
・乾杯の最後のヨーはvôと書き、もとは「vào=入れる」という動詞である。
・南部弁では子音[v-]は「ヤ」行で発音する。
・北部では「ヤ」行音が「ザ」行音に変化する。
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