定期購読マガジン「トマトのベトナム語学習ラボ」はこちら

vol.447 ベトナム語の文法的特徴と学習のポイント

※この記事は以前に出した動画で評判が良かったものをブログ化したものです。

今回はベトナム語の文法的特徴と勉強のポイントというテーマでかなり本質的な話をしたいと思います。

みなさんは「ベトナム語は〇〇語である」という風に特徴を一語で表すならば、この○○の中に入る語は何を思い浮かべるでしょうか。

ほとんどの人は「ベトナム語は声調言語である」のように音声面での特徴をあげるかと思います。

もちろんベトナム語は発音が難しく、発音は一番最初に覚えなければならならない項目です。

しかし単語や文法を勉強する上でのベトナム語の特徴は実はもう一個あります。

それはベトナム語とは「孤立語」であるということです。

今回は孤立語という用語とその特徴、及びその特徴に基づいた勉強のポイントをみなさんに紹介したいと思います。

孤立語とは

孤立語とは、単語に語形変化がなく、文法的機能が語順や機能語によって決定される言語のことを言います。

孤立語の特徴は以下の三つあります。

孤立語の特徴
  1. 語形変化しない
  2. 単語は位置や語順で意味が決まる
  3. 機能語が豊富にある

それぞれの特徴をみていきましょう。

①語形変化しない

語形変化とは日本語での「活用」のことです。

例えば行くいう動詞であれば、「行く、行かない、行きます、行け」というような変化をしますよね。みなさんも中学生の時にこの活用を習ったかと思います。

他にも英語では、例えばgoという単語が過去形の時にはwentになりますし、三単現のsが付いた時にはgoesといったような形に語形変化しますね。

しかしベトナム語の場合はその語形変化というものが一切ありません。ベトナム語で「行く」という意味のđiは永遠にđiのままで一切変化しません。

何があってもđiはđiのままで、永遠にずっとこのままです。

これが「語形変化しない」という孤立語の大きな特徴の一つです。

②単語は位置や語順で意味が決まる

ではđiはđiのままで永遠に変化しないのであれば、どのようにして日本語の活用のような文法的機能を持たすことができるのでしょうか。

それが二つ目の特徴である「単語は位置や語順で意味が決まる」ということです。例えば

・tôi đi ăn
私は食べに行きます。

この場合のđiは動詞の位置にきているので「行く」という意味で使われます。

一方で

・anh ăn đi
あなたは食べなさい。

この文の場合のđiは文末に来る文末詞の表現になります。

この場合は「行く」という意味ではなく、軽い命令のような表現「~して」という意味になります。

điというのは同じđiという単語でも、来る順番や位置によって「行く」という意味にもなれば命令形のような「~して」のような意味にもなるということです。

本質的にはđiは単独で存在している時はまだ意味は持っていません。文中での位置や語順が定められてはじめてđiの意味が決定されるのです。

「単語は位置や語順によって意味が決まる」これが孤立語の特徴の二つ目となります。

③機能語が豊富にある

孤立語の特徴の三つ目は機能語が豊富にあるということです。機能語とは前置詞、接続詞、文末詞、感嘆詞などの文法的な関係性を示す語のことをいいます。

ベトナム語ではこの機能語のことをhư từ【虚詞】と言います。対立する概念はthực từ【実詞】です。

まず実詞というのは実際に物体として存在する言葉のことです。それの対義語として虚詞があります。つまり実際に存在しない、物体としてない言葉のことを言います。

実際の例を挙げるとnếu「もし~なら」という仮定・条件を表す接続詞や、của「~の」という所属を表す前置詞があります。これらは実際に物体として存在しませんよね。だからベトナム語ではこのような言葉を実体が伴わない虚詞と呼んでいるわけです。

トマトは虚詞をここではわかりやすく機能語と呼んでいます。機能語が豊富にあるというのが孤立語の大きな特徴の一つです。


孤立語の特徴に基づいた勉強のポイント

孤立語はこのように三つの特徴がある訳ですが、ではどのようにその特徴に沿った形で勉強すればいいのでしょうか。そのポイントを三つ紹介したいと思います。

①単語の量をとにかく覚える

まず勉強のポイントの一つ目は単語の量をとにかくたくさん覚えるということです。量を何よりも優先しなければなりません。

上で説明したように日本語は語形変化する(活用する)言葉で、ベトナム語の場合は語形変化しない孤立語という特徴があります。

日本語の場合は「行かない、行きます、行った」のように〈規則〉を覚えることを優先しなければなりません。

しかしベトナム語の場合は「không、sẽ、đã」のように〈新しい単語を覚える〉ことによって文法的な機能を持たすことができます。ベトナム語では単語の量を覚えなければ文字通り話にならないということです。

更にベトナム語では例えばsẽという単語の意味を知らない場合、điという単語から意味を導くことは原理的には不可能です。sẽとđiには意味的には何の関係もない、無関係な形で独立して存在しています。だから「孤立」語と呼ぶのです。

②単語(表現)の位置と語順を常に意識して覚える

勉強のポイントの二つ目は単語や表現を覚える時、その位置と語順を常に意識して覚えておくことです。

孤立語の特徴は「単語の意味は位置や語順によって初めて決定される」ことでした。ですのである単語を覚えるときには「この位置でこの意味になる」ということを常に意識しておくということが大切になります。

③機能語を中心に使い方を覚える

三つ目の勉強のポイントは機能語を中心に使い方を覚えることです。

接続詞、前置詞、文末詞などの役割及び用法をしっかりと理解し、自分自身で完全に使いこなせるレベルまで覚えてください。受身的な覚え方では不十分なので自発的に使える形で覚えてください。

機能語の一つである文末詞についてまとめた記事はこちら↓

まとめ

ベトナム語は孤立語です。孤立語の特徴に沿った三つの勉強のポイントをおさえておくと、効率よく、かつ上達しやすい形でベトナム語学習を進めることができます。皆さんも是非覚えておいてください。

孤立語の特徴
  1. 語形変化しない
  2. 単語は位置や語順で意味が決まる
  3. 機能語が豊富にある
孤立語の特徴に基づいた勉強のポイント
  1. 単語の量をとにかく覚える
  2. 単語(表現)の位置と語順を常に意識して覚える
  3. 機能語を中心に使い方を覚える