前回勉強した方向動詞の応用編として、ベトナムでの地理上の移動の時に使う方向動詞の用法を紹介します。
例えば「ホーチミンからハノイへ行く」など、南から北への移動をする時はただ単に「đi=行く」を使うだけでなく、それに方向動詞を加えるのが普通です。
また、南北間の移動だけでなく、山岳地帯や海沿い・川沿いの地域へ移動する時にも方向動詞を使います。
どのような使い方をするのか具体的に見ていきましょう。
南から北への移動=ra
地理的に南から北への移動の時は「ra」を使います。đi raのように動詞と組み合わせてもいいし、ra単体でも使用可能です。
・tôi đi ra Hà Nội từ Tp Hồ Chí Minh
私はホーチミン市からハノイに行きます
・tôi đi ra Huế từ Đà Nẵng
私はダナンからフエに行きます
「từ〜」以下を除いてtôi đi ra Hà Nộiという文だけでももちろんokです。この場合、話者はハノイよりも南部にいるということが方向動詞raから読み取れます。
北から南への移動=vào
地理的に北から南への移動の時は「vào」を使います。こちらもさきほどと同じようにđi vàoでも、vào単体でもどちらでもokです。
・tôi đi vào Tp Hồ Chí Minh từ Hà Nội
私はハノイからホーチミン市に行きます
・tôi đi vào Nha Trang từ Đà Nẵng
私はダナンからニャチャンに行きます
なぜ南北の移動はra – vàoなのか?
raはもとは「出る」、vàoは「入る」という意味です。ではなぜ南北間の移動でこのような意味の単語が使われるのでしょうか?
これはベトナムが北から南へ侵“入”した歴史を持つからだと考えられます。
ベトナムは10世紀の中国からの独立以降、現在の中部沿海地方にあるチャンパ王国や、現在の南東部やメコンデルタ地方を支配していたカンボジアを侵略して領土を拡大させた歴史があります。これを「南進」といいます。
現在のホーチミン市も実はPrey Nokor(プレイノコール)という名前のカンボジア領だったんです。
つまり、北から南への侵“入(vào)”、未開の地に“入る”という感覚から北→南への移動はvàoが使われるようになったと考えられます。
ベトナムは近現代ではフランスやアメリカなど他国から「侵略された」、被害者的な歴史を持つベトナムですが、中世のベトナムでは北から南の国へ「侵略した」、加害者的な歴史を持ちます。
よく南北ベトナム人は性格や考え方など大きく違うと言われていますが、近現代の視点だけでは語れない、もっと深い歴史からくる南北の確執からくるものではないかとトマトは考えています。
平地から山岳地帯への移動=lên
平地から山岳地帯への移動は方向動詞のlênを用います。lênはもとは「上る」という意味から、低い場所から高い場所への「上側」方向のイメージを表します。
・tôi đi lên Đà Lạt từ Tp Hồ Chí Minh
私はホーチミン市からダラットへ行きます
・tôi đi lên Sapa từ Hà Nội
私はハノイからサパに行きます
山岳地帯から平地への移動=xuống
山岳地帯から平地への移動はxuốngを使います。xuốngは「下る」という意味から、高い場所から低い場所への「下側」方向のイメージを表します。
・tôi đi xuống Hà Nội từ Tp Điện Biên Phủ
私はディエンビエンフー市からハノイに行きます
・tôi đi xuống Nha Trang từ Tp Pleiku
私はプレイク市からニャチャンへ行きます。
海沿い・川沿いの地域から平地(都市部)への移動=lên
海沿いや川沿いの地域から平地(都市部)への移動の時はlênを使います。
川を上って(lên)平地の都市部へ行く、もしくは都会へ「“上”京する」というイメージで覚えましょう。
・tôi đi lên Tp Hồ Chí Minh từ Cà Mau
私はカマウからホーチミン市へ行きます
※カマウーホーチミン間を南北の関係とみてđi ra Tp Hồ Chí Minhとしてもよい。
・tôi đi lên Hà Nội từ Nam Định
私はナムディンからハノイへ行きます
平地(都市部)から海沿い・川沿いの地域への移動=xuống
平地(都市部)から海沿いや川沿いの地域への移動の時はxuốngを使います。さきほどの上京のlênの逆パターンです。
・tôi đi xuống Cần Thơ từ Tp Hồ Chí Minh
私はホーチミン市からカントーに行きます
・tôi đi xuống Hải Phòng từ Hà Nội
私はハノイからハイフォンに行きます。
ベトナムの基礎的な地理も知っておく
例文を見ていて気づいたかと思いますが、ベトナムの主要な都市がどこにあって、行く場所がどんな地形なのかをあらかじめ知っておかないとra, vào, lên, xuốngは使いこなせません。
少なくともベトナムの五大都市や有名な観光地がどこにあるのかを覚えておき、地形もざっくりとでいいので勉強しておきましょう。
ベトナムの地形は以下のことを理解していれば大丈夫です。
もし聞いたこともない都市名で、それがどこにあるのか検討もつかない時はra, vào, lên, xuốngは使わず、おとなしくđi đến〜のパターンを使いましょう。
また、これらの方向動詞は省をまたぐ長距離間の移動に基本使われます。同じ市内での短距離の移動には使いませんので注意して下さい。
まとめ
- 南から北への移動=ra
- 北から南への移動=vào
- 平地から山岳地帯への移動=lên
- 山岳地帯から平地への移動=xuống
- 海沿い・川沿いの地域から平地(都市部)への移動=lên
- 平地(都市部)から海沿い・川沿いの地域への移動=xuống
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