ベトナム語には「移動」「方向」「空間」のイメージを示す動詞というものがあり、参考書などでは「方向動詞」と呼ばれています。
方向動詞はその動詞の意味だけでなく、動詞が持つイメージ、特徴、使い方も覚えておかなければなりません。今回は基礎編としてよく使う方向動詞7つを紹介します。
方向動詞の特徴とイメージ
ベトナム語の主な方向動詞はra, vào, lên, xuống, về, đến(tới), qua (sang)などがあります。
これら方向動詞はそれ自身が述語動詞(Vそのもの)として用いられるだけでなく、他の動詞の後ろに置かれて(V+方向動詞の形で)、Vの「方向」や「空間」のイメージを示す補助動詞的な役割もあります。
まず最初に方向動詞の意味を覚え、動詞が示すイメージを理解しましょう。
上下内外を示す方向動詞
ra=出る 〈狭→広〉

raは「出る」という意味から、狭い場所から広い場所への「外側」に出る方向のイメージを示します。
※ここではわかりやすくđi+方向動詞の例で紹介しています。
・đi ra sân bay
空港に行く
・đi ra chợ
市場に行く
・đi ra biển
海に行く
vào=入る 〈広→狭〉

vàoは「入る」という意味から、広い場所から狭い場所への「内側」に入る方向のイメージを示します。
・đi vào nhà
家に入る
・đi vào phòng
部屋に入る
・đi vào cửa hàng
店に入る
lên=上る 〈低→高〉

lênは「上る」という意味から、低い場所から高い場所など「上側」への方向のイメージを示します。
・đi lên núi
山にのぼる、登山する
・đi lên cây
木にのぼる
xuống=下る 〈高→低〉

xuốngは「下る」という意味から、高い場所から低い場所など「下側」への方向のイメージを示します。
・đi xuống núi
山を下りる、下山する
・đi xuống tầng hầm
地下に下る
移動、到達を示す方向動詞
về=帰る 〈帰着・回帰〉

vềは「帰る」という意味から、よそからもといた場所に戻る、帰り着くという移動のイメージを示します。
・đi về nhà
家に帰る
・đi về quê
帰郷する
vềは他にも「戻す」「〜について」「〜へ」などの意味もあります。いずれにせよvềのコアは〈回帰〉だと覚えておけば様々な意味に対応しやすくなります。
đến(tới)=来る、到着する 〈到達〉

đếnは「来る」という意味から、ある対象へ向かって到達するという移動のイメージを示します。tớiも同じです。
・đi đến trường (rồi)
学校に着く / 学校に行く
・đi tới nhà (rồi)
家に着く / 家に行く
・đi đến Nhật Bản (rồi)
日本に到着する / 日本に行く
đếnは「〜まで」の意味もあります。通常上の例文のđi đến〜は「〜まで行く」という意味になります。
したがってđi đến trườngを「学校に着く」という訳にするには〈成立〉を表すrồiをつけたほうがいいでしょう。ただし会話ではđiは省略された形で使います。
qua(sang)=通過する、渡る 〈通過〉

quaは「通過する」という意味から、ある場所に向かうために何かをまたいで渡る移動のイメージを示します。sangも同じです。
・đi qua đường
道を渡る
・đi qua cầu
橋を渡る
・đi sang Việt Nam
渡越する
ちなみに「đi=行く」は〈消失と移動〉をコアに持ちます。
「行く」という意味からどうしても物体の〈移動〉ばかりにフォーカスが当てられてしまいますが、元あった場所から見ると物体は遠ざかり、同時に〈消失〉も行われています。
điは様々な用法がありますがコアの〈消失と移動〉を覚えておくと対処しやすくなります。
まとめ 普通の動詞と思わない
ベトナム語の方向動詞にはそれ自身が動詞そのものとして用いられるだけでなく、他の動詞の後ろに置かれてVの「移動」「方向」「空間」のイメージを示す補助動詞的な役割もあります。
今回の記事では単なる動詞の説明のようになってしまいましたが、方向動詞の基礎だと思ってイメージと合わせて覚えておいてください。方向動詞の応用編で今回の知識が役立つはずです。
- ra=出る 〈狭→広〉
- vào=入る 〈広→狭〉
- lên=上る 〈低→高〉
- xuống=下る 〈高→低〉
- về=帰る 〈帰着・回帰〉
- đến(tới)=来る、到着する 〈到達〉
- qua(sang)=通過する、渡る 〈通過〉
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