みなさんはベトナム語の形容詞の反復表現を知っていますか?
反復語とは単語の音が繰り返される現象のことで、ベトナム語では主に形容詞で起こります。ベトナム語の名称では「từ láy=双音節語、畳語(じょうご)」といいます。
ここではシンプルに「1文字の単語を2文字にすること」と考えてもかまいません。
ベトナム語の形容詞を反復する際には明確なルールがあります。やや複雑で難しいですが、程度表現の一つとして知っておくといいでしょう。
※今回紹介する反復語は、付加語(=ある単語の聞こえをよくするために無意味な単語を一つ加える現象)とは区別して説明しています。反復語と付加語は使う目的も性質も異なりますので注意して下さい。
形容詞の反復語法則
形容詞が反復する場合は以下の3つの原則に従います。
- 意味が必ず軽減される
- 反復する語は必ずもとの単語の前に置く
- もとの単語の声調や末子音によって反復する語の発音が変化する
①、②は簡単ですが③のルールが少しやっかいです。細かく見ていきましょう。
声調の変化のルール
1. もとの単語が「平らな声調」、「下がる声調」の場合→反復する語の声調は同じ
đen đen=やや黒い / xanh xanh=薄青色の / dày dày=少し厚い / nhiều nhiều=やや多い
※赤色は反復された語
2. もとの単語が「上がる声調」、「問う声調」、「倒れる声調」の場合→反復する語を「平らな声調」に変える
đo đỏ=赤みがかった / bân bẩn=小汚ない / tôi tối=薄暗い / nho nhỏ=やや小さい / trăng trắng=白みがかった / dê dễ=少し簡単な / ro rõ=やや明確な
3. もとの単語が「重い声調」の場合→反復する語を「下がる声調」に変える
nhè nhẹ=やや軽い / lành lạnh=薄ら寒い / chầm chậm=少し遅い
末子音が-p, -t, -c, -chの場合
もとの単語に末子音の-p, -t, -c, -chのいずれかがある場合は、反復する語をそれぞれ-p→-m、-t→-n、-c→-ng、-ch→-nhに変え、上がる声調の場合は平らな声調に、重い声調の場合は下がる声調に変えます。
・mát→末子音-tを-nに変え、上がる声調を平らな声調に変えるので反復する語はmanとなります。つまり反復語は「man mát=やや涼しい」です。
・đẹp→末子音-pを-mに変え、重い声調を下がる声調に変えるので反復する語はđèmとなります。つまり反復語は「đèm đẹp=小綺麗な」です。
mầm mập=小太りの / in ít=やや少ない / khang khác=少し異なる / sành sạch=やや清潔な / ươn ướt=少し濡れた、湿った / hèm hẹp=やや狭い
なぜ末子音-p, -t, -c, -chまで変えないといけないのか?
末子音-p, -t, -c, -chを持つ単語は「上がる声調」か「重い声調」の2種類しかないからです。
つまり末子音-p, -t, -c, -chは上の2種類の声調以外(=平らな声調、下がる声調、問う声調、倒れる声調)とは絶対につながりません。
するとそれらの末子音を持つ単語を上の法則通りに「上がる声調→平らな声調」「重い声調→下がる声調」として声調だけを反復語に変えると、単語として存在できなくなります(例えばmat, đèpのような単語は発音ルール上存在しえない)。
よってそれらの末子音をそれぞれ一番近い発音である末子音の鼻音に変える必要が出てきます。
つまり-p→-m、-t→-n、-c→-ng、-ch→-nhとして末子音を鼻音に変えれば他の声調ともつなげられるので反復語として成立させることができるというわけです。
まとめ
- 形容詞の反復語は意味が必ず軽減され、反復する語は必ずもとの単語の前に置く
- もとの単語が「平らな声調」か「下がる声調」の場合は同じ単語を反復させる
- もとの単語が「上がる声調」、「問う声調」、「倒れる声調」の場合は反復する語を「平らな声調」に変える
- もとの単語が「重い声調」の場合は反復する語を「下がる声調」に変える
- 末子音が-p, -t, -c, -chの場合は-p→-m、-t→-n、-c→-ng、-ch→-nhに変え、上がる声調を平らな声調に、重い声調を下がる声調に変える。
いつも楽しく読ませていただいております。
よろしければおうかがいしたいのですが、
hơi lạnh, hơi cayのような、hơi が着いた場合と比較してニュアンスや使いどころの変化はあるのでしょうか。