「寒い」はlạnhだけじゃない
ベトナム語で「寒い」といったらまずlạnhを思い浮かべるでしょう。
実はベトナム語の「寒い」はこのlạnhだけでなく、他にも様々な単語があります。各単語の違いを理解して覚えましょう。
「寒い」のいろいろ
lành lạnh=薄ら寒い、やや寒い
lạnhの程度を弱めた言い方です。もとの単語から下がる声調のlànhに変えて重ねて使うと、lạnhの程度を弱めた言い方になります。
lạnh lẽo=寒々しい、もの寂しい
こちらは逆にlạnhを強めた言い方です。気候にも使うことはできますが、以下の例のように「(状態、性質が)冷たい、寂しい」という意味で使うことが多いです。
・căn phòng lạnh lẽo
物寂しい部屋
・lòng người lạnh lẽo
心が冷たい
・cuộc sống lạnh lẽo
孤独な生活
lạnh lùng=(性格が)冷たい、薄情な、冷淡な
人の性格に対して使います。対義語は「thân thiện【親善】=フレンドリーな、親しげな」です。
lạnh giá=寒々しい、とても寒い
lạnhを強めた言い方です。lạnh lẽoと意味は似ていますが、こちらは主に気候で使います。giá lạnhでも可です。
lạnh cóng=寒くて手足がかじかむ、手足がしびれる(ほど寒い)
cóngは手足がしびれ、思うように体が動かない状態を表します。
lạnh buốt=骨の芯まで刺すほど寒い、骨身にしみるほど寒い
体が痛くなるほどの寒さや、骨の芯までしみるような厳しい寒さを表す時に使います。
rét=ぶるぶる震えるほど寒い
lạnhよりも寒さの程度が強く、体の中まで寒さがしみ込み、震えてしまうほどの寒さを表します。
rét buốt=震えと痛みがくるほど寒い
rétとlạnh buốtを組み合わせた言い方です。ぶるぶる震える寒さと体の芯まで突き刺す寒さが合わさった強烈な寒さを表します。
寒さの順番
以上の各単語を気候の寒さ順に表すと以下のようになります。右にいくほど寒さが強くなります。
lành lạnh < lạnh < lạnh giá < rét < lạnh buốt < rét buốt
寒さに敏感?なベトナム人
日本人の寒いとベトナム人の寒いにはかなり感覚のズレがあります。
例えばホーチミン市だと20℃を下回ると人々はlạnhと言い始めます。日本人の感覚からするとmát(涼しい)レベルで心地よいのですが、普段の暑い生活に慣れすぎているベトナム人にとっては寒く感じるのでしょう。
また、北部の一部地域では10℃以下になるとrétだと感じるので学校が休校になることがあります。日本人にとっては羨ましい制度ですね。
このようにベトナム人は少しでも通常より気温が下がるとlạnhだのrétだの言い始めます。寒さに対する感受性が日本人より高い(敏感)のでしょうか。
日本より暑い地域が多いベトナムですが、この寒さへの感受性の高さが「寒い」という意味の単語の多さを生んでいるのではないかと考えられます。
ちなみに南国のイメージが強いベトナムですが、実は北部の一部の地域では雪が降ることがあります。2020年1月にはラオカイ省のサパやランソン省のマウ山の山頂で氷雪が確認されました。また、2016年にはソンラ省のモクチャウで降雪が確認されています。
ただし、いずれの地域も北部の標高が高い山岳地帯で、かつ寒波が襲った時のごく限られた条件でしか見れないため、ほとんどのベトナム人はベトナムで雪を一生見ることはありません。
まとめ
- lành lạnh=薄ら寒い、やや寒い
- lạnh lẽo=寒々しい、もの寂しい
- lạnh lùng=(性格が)冷たい、薄情な、冷淡な
- lạnh giá=寒々しい、とても寒い
- lạnh cóng=寒くて手足がかじかむ、手足がしびれる(ほど寒い)
- lạnh buốt=骨の芯まで刺すほど寒い、骨身にしみるほど寒い
- rét=ぶるぶる震えるほど寒い
- rét buốt=震えと痛みがくるほど寒い
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ちなみにlạnhという単語はもともと漢越語のlãnh【冷】から来ており、音が変化してlạnhになりました。日本語では【冷=レイ】と読むのでベトナム語の発音と似ており覚えやすいですね。