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vol.432 北部弁と南部弁の発音の違い (声調・頭子音)

頭子音の北部弁と南部弁の違いをまとめてみました。

実は南北での発音の違いはそんなに多くありません。

ベトナム語の頭子音(とうしいん)全24種類のうち、南北で発音が分かれる音はたったの7種類です。
しかも1つ1つの発音自体は難しくありません。覚えるのも簡単です。

この7種の南北の発音の違いを知り、南北2つの地域で通用するベトナム語発音を学びましょう。

前提知識 北部弁、南部弁が話される地域はどこからどこまで?

多くの人は北部弁はハノイ周辺、南部弁はホーチミン市周辺で話される言葉だと漠然と理解していることでしょう。

以下の動画ではもっと具体的に南北の言語的な境界線を解説しているのでご覧下さい。

南北合わせて92%!

上の動画でも述べているように、北部弁地域と南部弁地域の人口比率を合わせると92%になります。

つまり北部弁と南部弁発音を身につけるだけでベトナムのほとんどの地域で通用するベトナム語発音ができるということになります。

もちろん北部弁地域、南部弁地域内にも各地方ごとに細かな方言が存在します。しかし大枠となるベースの発音を知っておけば多少イレギュラーな方言があっても対処できますし、理解しやすくなります。

私自身ベトナム全国を旅して暮らしていますが、自分が話すベトナム語は南部の田舎でも、北部の山奥でも基本的にどこでも通じます。(※リスニングはある程度の慣れが必要ですが)

それは北部弁と南部弁のベースとなる発音が頭に入っているからです。

北部に行ったら北部弁で、南部に行ったら南部弁で話すという当たり前のことをしてるだけです。

基本が身についていれば南北どこにいっても通用します。そのベースとなる南北発音を身につけるとベトナム旅行がより楽しくなりますよ。



南北の発音の違い

声調

北部弁︰6つの声調を明確に区別
南部弁︰問う声調と倒れる声調の混同

※南部弁では問う声調と倒れる声調が単語や個人差によって混同される場合があります。
すべての単語に混同が起こるわけではありませんので注意して下さい。

頭子音

では南北で発音が分かれる頭子音を具体的に見ていきましょう。それぞれ動画でポイントを解説しています。

①[r-]

北部弁︰「ザ」行
南部弁︰そり舌の「ラ」行

南部弁では舌先を上あごに触れさせない「そり舌」発音がポイントになります。

②[d-]

北部弁︰「ザ」行
南部弁︰「ヤ」行

③[gi-]

北部弁︰「ザ」行
南部弁︰「ヤ」行

gi-で1つの子音になることに注意して下さい。ただしgiêngなど二重母音の-iê-が含まれている場合のみ「ジィエ」というふうにィを加えた発音になります。

④[v-]

北部弁︰英語の[v-]
南部弁︰「ヤ」行

※南部弁の[v-]が「ヤ」行音になるのは南部人の会話でのクセのようなもので、常にそう発音されるわけではありません。

南部人の間でも北部弁のように通常の[v-]で発音する人も多く、個人差があります。



⑤[qu-]

北部弁︰クゥ音
南部弁︰ウゥ(W)音

qu-にある母音のuは介母音で、必ず短く発音されます。

⑥[tr-]

北部弁︰「チャ」行
南部弁︰そり舌の「チャ」行

⑦[s-]

北部弁︰「サ」行
南部弁︰そり舌の「サ」行

ポイントは上の動画を参考にして下さい。

※[tr-]と[s-]で南部弁がそり舌音になるのは南部人の会話でのクセのようなもので、常にそう発音されるわけではありません。

南部人の間でも北部弁のように通常の「チャ」行、「サ」行で発音する人もいて、個人差があります。

北部弁のほうが簡単

傾向として北部弁のほうが日本人的に発音しやすい音が多く、南部弁は日本語にない音が多いのである程度の練習が必要です。

いずれにせよ上の7種類の音以外はすべて南北共通の発音ですので、自分が発音したい言葉を先に覚え、ある程度慣れてきたらもう一方の発音を学ぶといいでしょう。

そうすれば全人口の92%をカバーできる南北発音の基本を身につけることができます。

決して難しいことではないのでみなさんもチャレンジしてみて下さい。

まとめ 南北の違い一覧表

子音 北部弁 南部弁
①[r-] 「ザ」行 そり舌の「ラ」行
②[d-] 「ヤ」行
③[gi-]
④[v-] 英語の[v-]
⑤[qu-] クゥ音 ウゥ(W)音
⑥[tr-] 「チャ」行 そり舌の「チャ」行
⑦[s-] 「サ」行 そり舌の「サ」行

1件のコメント

(1)「問う声調と倒れる声調の混同」について:
確かに南部人は6種類の声調を意識しようとしているようですが(書くときに正しく綴らなければならないためだと思われる)、私がホーチミンに滞在した1か月で(北部式の)倒れる声調を聞いたことは一回もありませんでした。街角でも、ベトナム語学校でも(ちなみに私は中国語とタイ語を話せるので、声調の聞き取りに関しては普通の日本人と違います)。またホーチミン市内のベトナム語の教師自身が私に向かって「あなたは今完璧な倒れる声調を発音したが、ホーチミンでは誰もその発音をしないし、できない人も多い、事実私ができない、せっかく日本人でその発音ができるようになったのに役に立たなくて残念ねー」と言っていました(割と年配だが高い教養の女性)。また、できる人でも、それは1単語だけ取り上げて発声する時にできるのであって、南部弁でしゃべりながら北部式の倒れる声調ができる人は(いたとしても)本当に少ないとも思うのですが、どうでしょうか? もっとも私は quan 1 と quan 3 に1か月しか滞在しなかったわけで、そんな限られた経験で一般化するつもりは毛頭ないのですが、動画を見て、ちょっとそのことを思い出しました。
(2) ホーチミンで聞いた r の発音:
個人差があるとおっしゃっていることを承知で書きますが、口の天井に舌を付けないで巻き舌で発音する人もいたように感じましたが、むしろスペイン語や江戸弁式の r や、中国のちょっと昔の r (濁った音を含んだ r)を発音する人をよく見かけた印象があります。特に末子音がptkの単語の時に。彼らがサイゴンっ子かどうかは分かりませんが、おおむね南部人のはずですから、r の発音は多様だという印象です。(もっとも、仮にそうでも動画ですべてのバリエーションに触れるのは得策でないかもしれない)
(3) tr について:
これもバリエーションがあるようで、確かに t と r を分離して発音する人がいますよね。ホーチミンのある人が「英語が喋れるならtragedyと言ってみろ、そのときのtrと同じだよ」とも言っていました。あと、学校の先生に「nyaと言うときの下の位置に持っていってチャと言ってみろ」と言われて、そのようにやってみると「今ちゃんと発音できてたぞ」と言われました。そういう教え方もあるんだなと思った次第です。
(4) 南部方言の重い声調(下にドット)について:
ここまで細かくブログで紹介する必要はないのかもしれませんが、南部では短くストップするのではなく、やんわりと下げてから少し上げる人もいますよね。

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