ベトナム語の母音は声調と合わせて一番最初に覚えなければならない最重要項目です。
それは声調と母音はどんな単語も必ず100%持っている必須のパーツだからです。発音の核となるのでとにかく最優先で覚える必要があります。
今回はその母音をポイント別に分け、体系的に整理しました。
母音の区別のポイント
日本語の母音は「あ、い、う、え、お」の5つです。一方ベトナム語の母音は倍近くの11個あります。
ではその11個ある母音を具体的にどのような観点から区別すればいいのでしょうか?
以下の3つのポイントから母音を区別することができます。
- 口の形
- 音の長さ
- 舌の位置
①の「口の形」は、口を大きく開くのか、すぼめるのか、もしくは半開きにするのかなど、口の開き具合によって音を区別します。ベトナム語の母音では一番大事なポイントです。
次に②の「音の長さ」も重要です。ベトナム語の母音には「長母音」と「短母音」があり、長めに発音する母音と短めに発音する母音に分かれます。
③の「舌の位置」も区別のポイントです。舌先の位置が前方(歯の方)にあるのか、後方(喉の方)にあるのか、そして舌が口の上側にあるのか、下側にあるのかによっても区別されます。

ただし舌の位置は母音の発音に慣れてから意識すれば十分です。
ですので初学者は①と②のポイントをまずしっかりおさえましょう。
母音総整理
では上の3つのポイントに従って実際に母音がどう区別されるのかを具体的に見ていきましょう。
[a]
①縦にも横にも広い
②長母音
③中舌・低い
[ă]
②短母音
③中舌・低い
※音声は単語の「ăn」を使っています。
[a]の短母音で、[a]の半分くらいの長さで短く発音します。
[i(y)]
②長母音
③前舌・高い
日本語の「い」より唇を横に引っ張ります。志村けんの「アイ~ン」の「イ~」の時のように唇を限界まで平たくしてみましょう。
また[y]はベトナム語では母音扱いされます。発音は[i]と同じです。ただしある条件下では長さが異なる現象が起こります。
[u]
②長母音
③後舌・高い
日本語の「う」より口をすぼませ、
[ư]
②長母音
③中舌・高い
口を横に広げ、「い」の口で「うー」と発音します。最初は両手で唇を横に引っ張って「う」と言うといいでしょう。
ボディーブローを食らった時の思わず出る「うっ」の時のような口の形にするのがポイントです。
[e]
②長母音
③前舌・低い
これ以上大きく開けられないくらい広く、大きく「えー」と発音します。ヤギの鳴き声のように「 メェ~」と言う「え」です。 最初は両手を使って唇を左右にひっぱって「えー」と言うとよいでしょう。
[ê]
②長母音
③前舌・真ん中
[e]より狭く「えー」と発音します。日本語の「え」と口の形はほぼ変わりません。音の長さは[e]と同じです。
[o]
②長母音
③後舌・低い
これ以上大きく開けられないくらい広く、大きい「お」です。にわとりの鳴き声のように口を縦に大きく言う「お」と言ってみましょう。舌先を下げ、舌の付け根を奥に引きながら言うとこの音が出しやすくなります。
実際ににわとりの鳴き声はベトナム語で「ò ó o」と言います。
[ô]
②長母音
③後舌・真ん中
[o]より口を狭くする「お」です。日本語の「お」より口をすぼませます。「ほぉ〜、そうですか〜」と言うときの「ぉ」のかんじです。音の長さは[o]と同じです。
[ơ]
②長母音
③中舌・真ん中
口を半開きにして、ゲップした時のように口をダラ〜ンとした状態であまり力を入れないで言う「お」です。舌の位置は舌先を浮かせて口内の真ん中に置くようにします。
[â]
②短母音
③中舌・真ん中
※音声は単語のânを使っています。
[ơ]の短母音で、[ơ]の半分くらいの長さで短く発音します。口の形や舌の位置は[ơ]とすべて同じです。[â]は単独では” ớ “と発音します。
まとめ

以上の説明を一枚の図で表しました。ベトナム語の母音の大切なポイントがすべてつまっています。この図を頭に入れて母音を完璧に整理しておきましょう。
参考 IPA記号と専門的名称
今回の母音の説明を音声学の専門的見地から整理したものが以下の表です。言語学や音声学の知識がある方は参考にしてみて下さい。
正書法 | IPA記号 | 名称 |
[a, ă] | /a/, /ă/ | 非円唇・中舌・広母音 |
[i] | /i/ | 非円唇・前舌・狭母音 |
[u] | /u/ | 円唇・後舌・狭母音 |
[ư] | /ɯ/ | 非円唇・中舌・狭母音 |
[e] | /ɛ/ | 非円唇・前舌・半広母音 |
[ê] | /e/ | 非円唇・前舌・半狭母音 |
[o] | /ɔ/ | 円唇・後舌・半広母音 |
[ô] | /o/ | 円唇・後舌・半狭母音 |
[ơ, â] | /ə/(/ɤ/) | 非円唇・中舌・半狭母音 |
母音の区別において音の高さ・低さやのどの強さ・弱さは全く関係ありません。音の高低やのどの強弱による区別は声調の役割だからです。