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vol.9 Tôi tên làは奥が深い!?

ベトナム語を少しでもかじったことのある人なら誰でも知ってるフレーズに「Tôi tên là(私の名前は…です)」の構文があります。

最初に習うのでこの形を丸暗記してる人も多いですが、実はこの構文は意外と複雑で、とても応用の利く構文なのです。

Tôiは「私」、tênは「名前」、ベトナム語の文法のルールに従えば、名詞の修飾は後ろから前にかかる後置修飾の形をとるのでtên tôi là..とtênが前にこないとおかしいはずです。

しかし、tôi tên là…とtôiが前に来るパターンのほうがよく使うし、この形でも全く問題ありません。それはなぜでしょうか。

「象は鼻が長い」の文の主語は?

実は「Tôi tên là」は「話題提示」構文といいます。「象は鼻が長い」構文とも言われます。

さて、「象は鼻が長い」の文の主語は何でしょうか?
象?鼻?…象を主語にすると「象は長い」、という少し変な文になってしまいます。

実際の主語は「鼻」です。象のほうは話題の口火を切る名詞の役割を持ち、「象っていうのはね…」と最初に象に関する話をふって、その後に鼻が長い、という情報を加えた文だということです。

tôi tên làのtôiは「私」を強調している

つまりtôi tên làのtôiはさきほどの「象」と同じ役割で、「私についていえば」とか「私というのはね」という形で先に「私」に関する話題を切り出して、実際の主語tên+là…という形につながるのです。

tôi tên là…を直訳すると、「私というのはね、名前が…なんです。」となります。この構文では「私」という単語を強調しているとも言えるでしょう。

話題提示構文の例

この話題提示構文は実際の会話でもとても役に立ちます。日本語の語順と同じなのでスッと口に出しやすいからです。

※灰色に塗りつぶした部分が話題提示の名詞

その仕事は私がします。=việc đó (là) tôi làm.

このバイクは私の母が買ったんだ。=xe máy này (do) mẹ tôi mua.

『学問のすすめ』は福沢諭吉が書いた。=sách 『khuyến học』 (là) ông Fukuzawa Yukichi viết.

※書き言葉では名詞と名詞の間にlà, do(~によって)などを加えないといけませんが、実際の会話では省略可能です。

まとめ

話題提示構文を一般化すると

〈話題提示したい言葉(名詞)+S(主語)+V(動詞)…〉

となります。基本の語順はtôi tên làと同じです。会話でもよく使うのでぜひこの構文を覚えておきましょう。