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vol.476 「ベトナム語の発音は難しい」それってほんと?

発音の難しさは具体的に言えれば言えるほどいい

「ベトナム語の発音は難しい」はベトナム語学習者が必ず言うフレーズで、ほとんどの人が当然だと思っている事柄でしょう。

では具体的に何がどう難しいのでしょうか?「発音が難しい」とはベトナム語のどの部分を指して難しいと言っているのでしょうか?

実際に「発音は難しい」と抽象的なことしか言えない人ほど発音が下手で勉強不足な人が多いです。そもそも具体的に発音の何が難しいのか説明できなければ発音を勉強しているとは言えません。

発音ができない人ほど「発音は難しい(だから自分は発音ができなくて当然だ)」と言い訳をしているように聞こえます。

逆に「ベトナム語のこの部分のこの発音が苦手です」と具体的に言える人ほど発音の勉強が進んでおり、上達している証拠です。それはできる発音とできない発音が本人の中で明確に分けられているからです。

発音が難しく感じるのはなぜ?

実際にベトナム語には誰でもできる簡単な発音もあります。ベトナム語の発音すべてが難しいわけではありません。

それでも多くの人が難しいと感じてしまうのはなぜなのでしょうか?
以下の3つの要因が考えられます。

知識不足

発音に関する知識がない、発音のやり方を知らないから漠然と難しく感じているパターンです。この場合の対処法は簡単で、ただ単にその音のしくみややり方を学べばいいだけです。

例えば平らな声調(a)や上がる声調(á)はその発音自体は難しくありません。ちゃんと日本語で発音のやり方を説明すればほとんどの人が一回で発音できます。

そもそも声調の発音自体も「日本語にないから難しい」とつっぱねるのではなく、「声調とは何か?」「アクセントとどう違うのか?」「日本語に声調を表す例はないのか?」など概念やしくみからきちんと学べば決して難しいものではないことがわかります。

このようにただ単に知識不足からくる難しさを解消するためには「学ぶ、知る」という姿勢を取ることが大事になってきます。

練習不足

ある音に対して練習をしておらず、不慣れであるから難しいと感じるパターンです。日本語にない、日本人にとって難しい発音をする時に起こりがちです。

そのような場合は、日本語で発音のしくみを理解した後に、繰り返し実践練習する必要があります。実践練習する場合はベトナム人などに発音をチェックしてもらいながら、正しい発音に慣れるまで繰り返し練習するしかありません。

複合難化

個々の発音はできてもそれらが組み合わさると難しくなってしまうパターンです。

例えばtáなど、[t-]に上がる声調がつくとつい力を入れて発音してしまい、tháのように有気音の[th-]になってしまう人がいます。
[t-]も上がる声調もその発音自体はできるのに、それらが結びつくとできなくなってしまうということがあります。

この場合もやはりtáという単語の発音そのものの練習が必要です。また、tứなど他の母音で発音できるかどうかパターンを変えてチェックする方法も有効です。

発音を「分ける」と発音が「わかる」

発音学習を上手く進めるための最初のステップはベトナム語の単語の音を分解することです。

ベトナム語の単語の発音は「①声調②母音③頭子音(単語の最初にくる子音)④末子音(単語の最後にくる子音)」に分かれます。

すべてのベトナム語は必ずこの4つのパーツに分けることができます。ベトナム語の発音がきちんとできるようになるためにはこの分解された4つのパーツをそれぞれ覚えなければなりません。

このように発音を分けるとベトナム語の音の全貌がわかり、難しい音と簡単な音がクリアに見えてきます。

発音が難しいと感じるのは音を構成しているパーツがわからず、何が難しくて何が簡単なのかわかっていないからです。

発音が「わかる」ためには発音を「分ける」ことが何よりも大事なのです。

難しい発音を見つけ、つぶしていくこと

ベトナム語には日本人に共通する難しい発音もあれば、その人自身にとって難しい発音もあります。音に対する感度の違いなどから発音が難しい、苦手と感じる度合いには個人差ももちろんあります。

日本語と共通するような簡単な発音はその発音のやり方を知るだけで十分で、そのような発音は繰り返し練習する必要はありません。重要なのはあなたにとって何が難しく、どの部分が苦手なのかをはっきりと特定し、それを発音できるように一音一音つぶしていくことです。

最初に述べたように、漠然と難しいと感じている状態では発音は上達しません。発音の全体像を理解し、発音をパーツ毎に分け、この単語の、この部分の発音が難しい、もしくは苦手であるということを知り、それを練習することがベトナム語の発音を学ぶということなのです。

自分の発音の弱点を細かく具体的に言えるようになりましょう。その時点で習得はもう目の前に見えているのですから。

まとめ

  • 発音の難しさは具体的に言えれば言えるほどいい。
  • 発音が難しく感じるのは①知識不足②練習不足③複合難化のいずれかが原因。
  • 発音が「わかる」ためには発音を「分ける」ことである。
  • ベトナム語の発音を学ぶことは難しい発音を見つけ、つぶしていくことである。