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vol.154 làの不思議③ ~なぜlàの否定文や疑問文のときだけphảiがつくのか?~

làを使った文と動詞や形容詞を使った文の違い

làを使った文の否定文、疑問文

làを使った文はベトナム語を勉強する人が必ず最初に習う文法項目です。「A là B(※A,Bは名詞)」で「AはBである」という基本文型を習った後は、次に必ずlàを使った文の否定文と疑問文を勉強します。ほとんどの参考書には以下のような説明があります。

・「A là B」の否定文はlàの前にkhông phảiをつけて「A không phải là B」の形式を用いる。
・「A là B」の疑問文はlàの前にcó phảiをつけ、さらに文末にkhôngを加えて「A có phải là B không?」の形式を用いる。

☆例☆
平叙文:anh là người Nhật あなたは日本人です。
否定文:anh không phải là người Nhật. あなたは日本人ではありません
疑問文:anh có phải là người Nhật không? あなたは日本人ですか?

多くの人が上の項目を詳細な説明を受けずにとりあえず暗記して覚えたと思います。トマトも最初は特にあまり考えずにこういうものなんだと思って暗記しました。

動詞や形容詞を使った文の否定文、疑問文

そして勉強が少し進み、動詞や形容詞を使った文の否定文や疑問文を習います。

・「S V(動詞や形容詞)~」の否定文はkhôngをつけて「S không V~」の形式を用いる。
・疑問文はVの前にをつけ、さらに文末にkhôngをつけて「S có V~không? 」の形式を用いる。

☆例☆
平叙文:anh học tiếng Việt あなたはベトナム語を勉強します。
否定文:anh không học tiếng Việt. あなたはベトナム語を勉強しません。
疑問文:anh học tiếng Việt không? あなたはベトナム語を勉強しますか?

動詞や形容詞を使った文もlàを使った文の時と同じように基本的にこういう形式として暗記をします。

làを使った文と動詞や形容詞を使った文の違い

さて前置きがだいぶ長くなりましたがlà文と動詞や形容詞文の否定文、疑問文の違いは何でしょうか?

それは「phải」があるかないかです。

なぜlàを使った文の時だけphảiという余計にも感じる単語を入れなければならないのでしょうか?動詞や形容詞を使った文にはなぜphảiが不要なのでしょうか?

このような疑問に答えてくれるベトナム語の参考書は日本にはまずありません。「とりあえずこういうものとして覚えましょう」的な説明の参考書がほとんどです。もちろんベトナム人もその理由を論理的に説明できません。

ただネットで調べたらベトナム語の本をいくつか出してる田原先生の論文にちょこっとその疑問の答えが書いてありました。それを参考にしながら筆者の考えも交えてみなさんに紹介したいと思います。

※何だかすごい読みにくい論文だけど興味のある人は読んでみて下さい。

田原洋樹(2008年)『ベトナム語làの取り扱いかたをめぐって』立命館アジア太平洋大学
http://www.apu.ac.jp/rcaps/uploads/fckeditor/publications/polyglossia/Polyglossia_V15_Tahara.pdf

なんでlàを使った文の否定文や疑問文のときだけphảiがつくの?

ここからが本題です。「A là B(※A,Bは名詞)」の時のlàの用法はA=BとしてAとBをイコール関係で繋ぐ動詞としての役割を持っています。この場合のlàはあくまでAとBを繋ぐ「しるし」です。動詞として主張はそこまで強くありません。現に会話ではanh tên Tanaka.やkhông phải người Nhậtみたいにlàの省略がよく起こります。それぐらいlàはあってもなくてもいいような影のうすいものなのです。

そんないつ消えるかわからない影のうすいlàにkhôngなどの否定を表す主張の強いパーツを直接つけることはなじみません。làとkhôngは水と油のような関係です。そしてkhôngが動詞を否定するために現れたのにlàにふっと消えられてしまったらkhôngの存在価値はなくなってしまいます。

この問題をどうにかしたい。そこでlàとkhôngの間に仲立ちをする「phải」の登場です。phảiは「正しい、そのとおりである」の意味を持つ形容詞で、動詞と同じ役割を持ちます。làやkhông双方との相性も良く仲介役としてはうってつけです。また仮にlàが省略されてもkhôngにとってはphảiが必ずくっついてくれるのでkhôngにとっても安心して存在を維持できます。

以上のことからlàを使った疑問文、否定文には必ずphảiを伴うようになったのだと考えられます。

まとめ

・làを使った文と動詞や形容詞を使った文の違いは「phải」があるかないか。
・làは動詞としての主張は弱く、khôngとの相性は悪い。
・そこでlàとkhôngの間に立つ「phải」が必要となる。

1件のコメント

トマトさん いつも参考にさせていただいてます
ベトナム語学習超初心者です
先日、形容詞文をベトナム人の先生に習いました
形容詞の否定文は主語+không +形容詞と習ったので、「Cái bút màu xanh. Cái bút không màu xanh.」と例文を作ったところ
「cái bút không phải màu xanh 」だと言われました
màu xanh は形容詞ではないのか?(ベトナム語には日本語のように明確な品詞の分類がないという説も聞いたことがありますが)とか
なぜここはkhông phải なのか?とその先生に聞いても「性質」を否定するからという
わかったようなわからないような説明しか
貰えませんでした
これは口語での使い方なのか、例外なのか…
ネットで探しても納得いく解説が見つけられませんでした
もし、トマトさんが
こうなる理由をご存知でしたら是非教えてください
よろしくお願いします

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