北部弁や南部弁の違いによく発音や語彙の差異があげられます。
しかし発音や語彙以外にもそれぞれの地域に存在する独特の法則というものも存在します。
今回は南部方言における三人称の省略法則を紹介します。
二人称 + ấy=三人称
基本事項のおさらいです。
ベトナム語の三人称は二人称に“ấy”をくっつければオッケーです。
(例)
・anh ấy
彼
・chị ấy
彼女
・em ấy
彼 / 彼女
まず基本的な二人称を知っていないと三人称を作ることすらできないので二人称がまだ完璧でない人は以下の記事を参考にして下さい。
南部弁では「二人称+問う声調=三人称」
通常三人称は上の「二人称 + ấy」が一般的な言い方です。参考書などにも必ず書いてあることです。
しかし南部弁ではấyを捨て、二人称の部分の発音を問う声調(thanh hỏi)に変えるだけでも三人称ができてしまいます。
(例)
anh ấy→ảnh
chị ấy→chỉ
em ấy→ẻm
ông ấy→ổng
bà ấy→bả
cô ấy→cổ
bạn ấy→bản
三人称に必須であったấyもこの場合は不要です。
そして二人称にもともとあった声調(chịやbàなど)も無理やり問う声調(thanh hỏi)に変えて三人称を作ります。
なかなかおもしろい法則ですね。
ảnhは「写真」、chỉは「〜だけ、教える」 など通常の単語の意味ももちろんあります。
三人称の判断は文の位置や文脈から判断して下さい。
法則にあてはまらない二人称
この南部弁の「二人称+問う声調=三人称」の法則はすべての二人称にあてはまるわけではありません。
以下の二人称にはこの法則を使うことはできません。
bác ấy→☓ bảc
chú ấy→☓ chủ
con ấy→☓ cỏn
cháu ấy→☓ chảu
cậu ấy→☓ cẩu
つまりさきほどあげた「ảnh, chỉ, ẻm, ổng, bả, cổ, bản」の7つを覚えておけばいいということですね。
なぜこのような言い方をするのか?
ベトナム語は省略を好む言語です。
通常の三人称の言い方の場合、新たにấyをつけなければいけないので当たり前ですが必ず2語になります。
そして実際声に出してみるとわかりますがanh ấyやchị ấyになると少し発音しづらくなります。
会話などを続けているとこの発音しづらい2語の三人称がだんだん言うのがめんどくさくなってきます。
そのような煩わしさを解消するため、1語に簡略化し、どの二人称にもない問う声調をつけて法則化したのだと考えられます。
北部の人達よりもマイペースで面倒くさがり屋な人が多い南部の人達だからこそ作った法則なのかもしれませんね。
まとめ
・南部弁では三人称は「二人称+問う声調」でも言うことができる。
・しかしbảc, chủ, cỏn, chảu, cẩuとは言わない。
・三人称をより簡略化するためにこの法則が生まれたと考えられる。
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