文末に置いて特定の意味を付け加える「語気詞」を紹介するシリーズです。
今回は語気詞「đây」を見てみましょう。
もとは〈近い場所〉を示す代名詞
ベトナム語を少しでも勉強している方ならご存知かと思いますが、đâyは「これ、ここ、こちら」という意味の話し手に近い物や人を示す代名詞としてよく用いられます。
(例)
・đây là chị Tanaka.
こちらは田中さんです。
・tôi sống ở đây.
私はここに住んでいます。
・đây là cái gì?
これは何ですか?
「これ」という意味ではcái nàyと同じ意味で使われます。ただし「これ」という意味でのđâyは主語としてしか用いられません。
(例)
これ下さい。
○cho tôi cái này.
☓cho tôi đây.
語気詞「đây」は〈“いま”の強調〉
さて、ここからがポイントです。
đâyは文末に置くと“いま”を強調する役割を持ちます。具体的には以下のようなニュアンスを加えることができます。
①行動を時間的に近いうちに起こす 「今」「もう」「すぐに」
・tôi đi ngủ đây.
私はもう寝ます。
・về nhà đây.
もう家に帰ります。
・mình làm gì đây?
(今)何をしようかな?(※自問に使う)
②今、目の前に存在していることを強調する
・alo, Suzuki đây.
もしもし、鈴木です。(※電話で受け取る時によく使う)
・đưa thuốc đây.
お薬をどうぞ。
・ơn giời cậu đây rồi
君が(ここに)いてくれてよかった。
※テレビ番組「thank god you’re here」のベトナム語名。
※đâyは代名詞のở đây「ここに」のởが省略された形ともとれます。
代名詞も語気詞も「近さ」を表す
語気詞のđâyも、もともとは「これ、ここ、こちら」の〈近い場所〉を示す代名詞の用法から派生しています。
空間的な近さから時間的な近さを表し、“今、ここ”を強調するニュアンスを持たせる意味にまで広がったと考えられます。
いずれにせよ代名詞のđâyも語気詞のđâyも「話し手からの近さ」を表すという本質は変わりません。
それぞれの用法を分けて覚えるというよりも、その言葉のコアを理解することに努めましょう。
まとめ
・đâyはもともと〈近い場所〉を示す代名詞「これ、ここ、こちら」の意味を持つ。
・語気詞「đây」は〈“いま”の強調〉を表し、行動を時間的に近いうちに起こす用法や、目の前に存在していることを強調する用法がある。
・代名詞のđâyも語気詞のđâyも「話し手からの近さ」を表すという本質は変わらない。
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